内容説明
「美は…美的なものはもう僕にとっては怨敵なんだ」。吃音と醜い外貌に悩む学僧・溝口にとって、金閣は世界を超脱した美そのものだった。ならばなぜ、彼は憧れを焼いたのか?現実の金閣放火事件に材を取り、31歳の三島が自らの内面全てを託した不朽の名作。血と炎のイメージで描く“現象の否定とイデアの肯定”―三島文学を貫く最大の原理がここにある。金閣を焼かなければならぬ。破滅に至る青年の「告白」。最も読まれている三島作品。国際的評価も高い。映画・舞台化多数。
著者等紹介
三島由紀夫[ミシマユキオ]
1925‐1970。東京生れ。本名、平岡公威。1947(昭和22)年東大法学部を卒業後、大蔵省に勤務するも9ヶ月で退職、執筆生活に入る。’49年、最初の書き下ろし長編『仮面の告白』を刊行、作家としての地位を確立。主な著書に、’54年『潮騒』(新潮社文学賞)、’56年『金閣寺』(読売文学賞)、’65年『サド侯爵夫人』(芸術祭賞)等。’70年11月25日、『豊饒の海』第四巻「天人五衰」の最終回原稿を書き上げた後、自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決。ミシマ文学は諸外国語に翻訳され、全世界で愛読される(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こーた
255
比類なき美文で描きだされる懊悩は、極めて凡庸なようにぼくにはおもえる。いや凡庸だからこそ、いまも多くの若者を惹きつけてやまない。吃音でなくても、考えをうまく伝えられないことがある。ましてやコミュニケーション能力とやらの過度に評価されがちな現代では、そのことによる悩みは一層深いかもしれない。世界を作っているのは認識だ。いや、むしろ認識できる世界しか我々には知覚できない、というべきか。その認識を乗り越える唯一の方法は行為だ。動くことで世界は変わりうる。世界とのズレに悩み、行為を思いたつ。でも実行する人間は⇒2021/07/15
あや
99
私は映画から入った。主人公には共感しないけど文章はすごく読みやすい。作家に向かって言うのは失礼だけれどすごく読ませる文章。他の新潮文庫の著作も所有しているけれど積読のままである。2020/11/26
NICKNAME
58
三島作品としてはそれほど難解ではなく、今まで読んだ三島作品の中で一番読み易く好きな作品かもしれない。途中淡々と進み退屈になるのだが終焉に向けて面白くなってゆく。相変わらず精神疾患気味サイコパス的登場人物が主なキャラクーであるが、そもそも小説とは健全で聡明な登場人物だけでは描けないものなのだろう。むしろ病んだ人々の心や社会の闇を描くことを主な目的としているのが小説なのではないかと思ってしまう。映画がある様なので是非観たいと思います。2022/05/24
そら
53
ん~💦難しい、、(>_<)。溝口が金閣寺の美しさについてとことん主観的に取りつかれたかのように感じたまま、思うがままに述べているのが、とにかく難解で理解できない💦。三島由紀夫がかしこすぎて、表現が、私の想像の域を超えている。。溝口にとって金閣寺は何なのか?金閣寺を焼くことで、この世界が崩壊するみたいに思ってるけど、傍から見てると過剰すぎ(笑)。精神病っぽい。でも、面白かった。読んでよかった(^^♪2021/07/20
コージー
46
★★★★☆1950年に実際に起こった金閣寺放火事件をもとに創作された作品。吃音に悩まされる学僧が金閣寺に魅せられ放火を企てるという話。主人公は自分の境遇や運命を嘆くが、その悲運に閉じこもることなく、自ら切り拓こうとする。歴史ある美の象徴であった金閣寺を焼くこと事態は狂気の沙汰のようにも思えるが、戦後という混沌とした時代の中で行き詰まった少年にとっては、唯一の創造的な行動だったのではないだろうか。三島由紀夫の耽美な文章と退廃的であり刹那的な世界観が、とても上手く絡みあった素晴らしい作品だと思う。2021/07/10
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