出版社内容情報
昭和の神風連を志した飯沼勲の蹶起計画は密告によって空しく潰える。彼が目指したものは幻に過ぎなかったのか? 英雄的行動小説。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
284
物語は『春の雪』から19年の後、本多も38歳になっている。ここで清顕は、飯沼勲として転生を果たしていた。明治の神風連に理想を見て、生を駆け抜けていった勲の物語だが、やはり、そこに三島自身の影が見えることも否めない。神風連の為したことも、勲の行為も、そして三島の蜂起もまたことごとく無為に散って行った。彼らは一様に「潔く散る」ことにのみ生の意義を賭けたのだろうか。あるいは、三島の美意識は「死」においてしか完結しないのだろうか。『春の雪』の「雅」は、ここ『奔馬』において「潔」という一瞬の美に形を変えたのである。2013/05/24
みも
161
この第2巻には、三島が武闘派としての地位を確立した、その哲学的思考と行動原理を見ることが出来る。若々しい汗が迸り、己の信じた道を邁進する姿こそ、彼が自決へと突き進んだ自己の投影であったのだろうか。読解が難しい個所も多々あり、僕が僕の中できちんと咀嚼しきれているのか、甚だ心許ないが、そのひたむきさに若かりし頃の僕は間違いなく呼応した。三島は執筆中のどの時点で、決起と自決を決意していたのだろうか。僕などには知る由もない。45歳…若すぎる。1986/01/01
遥かなる想い
161
「豊饒の海」の中では、ある意味、男らしい物語なので、「春の雪」のイメージで読むと、虚をつかれる感じがする。昭和の神風連を志した飯沼勲の蹶起・自刃・・もしかしたら、三島は自分自身をダブらせていたのかもしれない。文体は激しく心も揺さぶられる。2010/06/12
ナマアタタカイカタタタキキ
147
恋も忠も源は同じということだろうか、前作同様半ば頃から急き込むようにして一気に読んだ。観念形態に囚われた若者の純粋さと情熱と。前作の儚げで煌びやかな世界と打って変わって、その感情の滾りだとか男性的な荒々しさに心を奪われた。その自決の美学には同調できなくとも、脇目もふらず己の中の衝動に忠実であり続けること、その生き方自体が美として成立することは理解できるかもしれない。あとはやはり、女とは現実世界において非常に強かな生き物なのだと思った。法廷で堂々と偽証をやり遂げる槙子、そしてその後の勲の弁解といったらもう…2020/10/27
れみ
138
お芝居観るための予復習・その②松枝清顕の死から約18年。控訴院判事となった本多繁邦は、清顕の生まれ変わりと思われる飯沼勲と出会い、その勲は「新風連史話」という本に心酔し、政治や社会の腐敗を改革するべく事件を起こそうとするが…というお話。このお話を読むと、純粋であることや国の行く末を憂えることは悪くない…というかむしろ正しいのに、純粋すぎることやそれを他者や社会全体に求めることは、悪とは言わないまでも、過激で危険なものになってしまう…ということを考えさせられる。前にこのお話を読んだのは10年以上前で、→2018/11/10
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