出版社内容情報
【東大法学部生】超エリート青年が挑んだ破滅的遊戯。実在事件に着想を得た、シニカルな青春物語。
地方の名家に生れた川崎誠は、父への反感を胸に徹底した合理主義者として一高、東大へと進むが、ある日大金を詐欺で失った事から今度は自分で金融会社を設立する。それはうまく行くかに思われたが……。戦後世間を賑わした光クラブ社長の自殺に至る波瀾にみちた短い生涯を素材にして、激しい自己反省癖と自意識過剰の異様で孤独な青春を描いて作者独自のシニシズムに溢れる長編。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
161
再読。この作品も、戦後間もなくに起こった実際の事件をモデルとして書かれており、その限りでは『金閣寺』と同様だ。また、主人公にあっては、現実よりも観念が優位に立つことでも共通項を持っているだろう。ただし『金閣寺』においては「美」がその中核にあったが、ここではそれが「金」であり、虚妄ということになりそうだ。驚くのは、この作品が書かれた時、三島は弱冠25歳であったこと。モデルとなった光倶楽部事件の首謀者、山崎晃嗣とは同年齢であった。2012/06/12
遥かなる想い
132
戦後世間を賑わした「光クラブ」をモデルにした有名な三島の小説。小説自体は読みやすく、毒もなく淡々とした描写。独特な文体から読んでいてなんとなく懐かしい気分にさせるのは、逆に三島由紀夫という非凡な作家の力量なのだろうか?2010/06/12
かみぶくろ
114
「光クラブ事件」を題材にした社会派小説‥かと思いきや、モデルとなった山崎晃嗣の個人的心理描写にかなり重きを置いた作品。三島自身失敗作だと言っている本作だが、確かに個人の心理や思想の掘り下げとしては(あくまで三島の他の作品と比べてだが)あっさりし過ぎているし、「戦後青年の虚無」みたいな一般論時代論を描かれているかと言えば、主人公の心理が結構特殊で普遍性を獲得できているとは言い難い。山崎を客観的に見ようとし過ぎて、三島自身楽しくのめり込むように書けなかったんじゃないかと勝手に推量。十分面白いですけどね。2016/06/21
青蓮
111
実際に起きた「光クラブ」事件を素材にした作品。事件の方では後に社長は自殺しているみたいだけれど、作品の方は暗示するだけで自殺はしておらず、実際の事件の色合いはそれ程濃くはない。名家に生まれ、エリートとして生きることを約束された誠だったが、詐欺で大金を失ったことで今度は自ら金融会社を立ち上げて詐欺を働く事に。破綻へと向かって行く途中で物語は終わっている。ふと途切れたその余韻の空白が、その後やってくるだろう破滅の影を見事に浮かび上がらせている。誠の屈折した心理が解るだけに何だかとても切ない幕切れのように感じた2017/05/11
ゴンゾウ@新潮部
109
戦後の光クラブ事件を題材にした作品。もっとドラマタイズされているものだと思っていたが、主人公の屈折した内面を幼少期から追っている。名家に生まれエリートの人生を約束されていながら父親に反感を抱き暗い青春を送る。詐欺にひっかかり大金を失ったことから騙す方に転身する。彼の生き方に正直言って共感できない。期待していただけに残念。2017/01/18
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- 和書
- まむし三代記




