内容説明
T大法学部の学生宝部郁雄と、大学前の古本屋の娘木田百子は、家柄の違いを乗り越えてようやく婚約した。一年三カ月後の郁雄の卒業まで結婚を待つというのが、たったひとつの条件だった。二人は晴れて公認の仲になったが、以前の秘かな恋愛の幸福感に比べると、何かしらもの足りなく思われ始めた…。永すぎた婚約期間中の二人の危機を、独特の巧みな逆説とウィットで洒脱に描く。
著者等紹介
三島由紀夫[ミシマユキオ]
1925‐1970。東京生れ。本名、平岡公威。1947(昭和22)年東大法学部を卒業後、大蔵省に勤務するも9ヶ月で退職、執筆生活に入る。’49年、最初の書き下ろし長編『仮面の告白』を刊行、作家としての地位を確立。主な著書に、’54年『潮騒』(新潮社文学賞)、’56年『金閣寺』(読売文学賞)、’65年『サド侯爵夫人』(芸術祭賞)等。’70年11月25日、『豊饒の海』第四巻「天人五衰」の最終回原稿を書き上げた後、自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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だんぼ
362
「幸福というものは どうしてこんなに不安なのだろう」あたりは人通りも少なくシンとしている、都電の音がしんみりとひびいて来る2024/03/04
ヴェネツィア
194
タイトルの付け方が秀逸だ。岡本かの子の短歌に「ゆるされてやや寂しきはしのび逢ふ深きあはれを失ひしこと」というのがあるが、本書は、この「ゆるされて」の状態での男女の心理と葛藤とをを描いたもの。主人公の郁雄と百子をはじめとして、登場人物たちの役柄が固定されていて、お芝居を見るような楽しさはある。ただし、そこに複雑さや本質的な苦悩といったものはない。また、最後は面倒になったのか、一気に大団円に向かう。タイトルが決まった後は、比較的短時間で書かれたのだろうと思う。その意味では、三島のうまさは堪能できるのだが。2012/09/14
ケイ
154
三島のこういう作品は好き。ある程度以上の恵まれた家庭で育った人達の(幸せなということでなく、お金持ちだったり、家柄が良かったりということ)恋愛やモノの考え方をサラリと描くのが上手い。そして、三島は恐ろしい女というものをよく知ってるなと思った。学生を誑かす年上の女の誘惑や 娘を通じて自分の暮らしも上げようとする母など、読んでいて恐ろしかった。つたのような女を罰しようとなぜしないのかしら。この女を見て、いま、世間で話題の母息子が浮かんで仕方なかった(これについては想像するのみでコメは勘弁してね)2019/04/01
遥かなる想い
130
比較的軽そうな本を購入して読んでみたら、本当に軽くて拍子抜けた・・・ という感じ。「永すぎた春」という題材は古くて新しいが、昭和35年に 書かれたこの時代の感覚はあまりにものどかで、三島らしい雰囲気もなく あっさりと読んでしまった。婚約してから、結婚まで1年3か月待つという 感覚も若い二人がかわす会話も、なんとなくのどかで最近の毒のある作品になれた我々にはちょっと物足りない、というのが正直な感想。2010/06/12
馨
128
夢中であっという間に読みました。ありがちな婚約している2人の間に起こる日常の問題、婚約までの乗り越える道のり!がテーマですが登場人物皆個性的であのおせっかいな姑さえなぜか憎めない(浅香の母は除く)。きっとどこかにこういう家族いる!と思うような構成も良いです。ストーリーを通して大事なことを教えてくれました。他人のことを考えることは自分のことを考えること。だったかセリフがぐっときました。三島先生は単なるの恋愛小説に収まらない所がイイ☆女性の繊細さ、妬み、美しい心も醜さもよくわかっているなぁと思います。2013/10/07