出版社内容情報
苦しい。彼の姿から目が離せない僕。そんな男の子の気持わかりますか?
「私は無益で精巧な一個の逆説だ。この小説はその生理学的証明である」と作者・三島由紀夫は言っている。女性に対して不能であることを発見した青年は、幼年時代からの自分の姿を丹念に追求し、“否定に呪われたナルシシズム”を読者の前にさらけだす。三島由紀夫の文学的出発をなすばかりでなく、その後の生涯と、作家活動のすべてを予見し包含した、戦後日本文学の代表的名作。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
589
再読。三島は太宰が嫌いだと言ったが、強烈なナルシスムから発し、表現者としてそれに向かっていく両者の姿勢は、ひじょうによく似ている。ただ、太宰は性的なものをあくまでも忌避し、三島は逡巡しつつ「仮面」の語りの中でそれと向きあっていく。「私」の至高のエロスは「聖セバスチャン」にこそあり、畢竟マゾヒズムとオナニズムの究極の姿でもあった。そして、三島が「仮面」を被ることで隠さなければならなかったのは、まさしくそのことに他ならなかったのである。もちろん、この作品はフィクションであり、語り手の「私」=三島ではない。2012/07/28
ehirano1
306
著者自身の赤裸々な性的志向性の告白がることからある意味肉体的苦痛と美しさを以て描かれて描かれていました。一方で、本書は著者ならではの「孤独」というものを描かれているにも感じました。2023/07/08
遥かなる想い
302
中学校のころに本書を読み、非常に気持ちが悪かった。生理的に受け付けなかったのだろうと思う。三島由紀夫の時代、よく書き切ったものだと思う。2010/06/12
kaizen@名古屋de朝活読書会
225
p182「浮かぬ面持ちを気(け)どられまいために」p237「顔から血の気の引いてゆくのを気取(けど)られぬように」。田中美代子による注解。佐伯彰一による「三島由紀夫 人と文学」。福田恆存(つねあり)による「仮面の告白について」。年譜。新潮社から全集がでているとのこと。付録も豪華。1冊で三島由紀夫の全貌が分かるかも。昭和24年河出書房より刊行。新潮文庫100冊2013/07/12
れみ
214
女性ではなく男性に欲望を感じる青年が幼少期からの自分を振り返る…という内容。自叙伝的な描かれ方だから余計にドキドキしてしまう。ものすごく耽美的なところはあるけど思春期の頃に異性より同性が好きなんじゃないか私、という時期があった経験を何人かからきいたことがあるし、またものすごく自意識過剰になるというのも分かる気がするので、そういう意味ではその年頃らしいテーマで書かれた作品と言えなくもないかも。言葉が難しいのやら色々でなかなか読み進められなかったけど、園子さんが出てきてからがわりと読みやすかったかも。2016/11/29




