出版社内容情報
薩摩の支配下にあった奄美。孤児のフィエクサは、父を失った少女サネンと兄妹の契りを交わす。砂糖作りに従事する奴隷のような身分の二人だが、フィエクサは碁を習い才覚を発揮、サネンは美しい娘に成長する。しかしサネンが薩摩の役人から妾に所望され、過酷な運命が動き出すーー。濃厚な花の匂いの中、無慈悲な神に裁かれる禁断の絆。魔術的な魅力に満ちたファンタジーノベル大賞受賞作。
内容説明
薩摩の支配下にあった奄美。孤児のフィエクサは、父を失った少女サネンと兄妹の契りを交わす。砂糖作りに従事する奴隷のような身分の二人だが、フィエクサは碁を習い才を発揮し、サネンは美しい娘に成長する。しかしサネンが薩摩の役人から妾に所望され、過酷な運命が動き出す―。濃厚な花の匂いの中、無慈悲な神に裁かれる禁断の愛。魔術的な魅力に満ちたファンタジーノベル大賞受賞作。
著者等紹介
遠田潤子[トオダジュンコ]
1966(昭和41)年、大阪生れ。関西大学文学部独逸文学科卒業。2009(平成21)年『月桃夜』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。『雪の鉄樹』が「本の雑誌が選ぶ2016年度文庫ベスト10」第1位に、『オブリヴィオン』が「本の雑誌が選ぶ2017年度ベスト10」第1位に輝く。『冬雷』で第1回未来屋小説大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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akiᵕ̈
41
沖縄奄美を象徴するサネン花《月桃》が結ぶ、現代パート〈海のはなし〉と過去パート〈島のはなし〉が交錯して物語は進む。兄を亡くし喪失し1人カヤックで海に出た茉莉香。そこで鷲に話しかけられたことから、薩摩支配下にあった奄美という地で、奴隷扱いされ自由のない暮らしを強いられていた制度があった歴史的背景を絡ませた2人の兄妹の壮絶な物語へと誘われる。兄妹として生きていく事を誓ったフィエクサとサネン。お互いがこれでもかという程にお互いを思うが故に襲いかかる悲劇。想いの深さが果たして相手の幸せになるのかを突きつけられた。2023/02/15
ぽてち
40
本書は2009年の第21回日本ファンタジーノベル大賞受賞作にして、遠田さんのデビュー作でもある。単行本→新潮文庫nexに収められたのち、今回の再文庫化に伴い加筆修正されたそうだ。初読なのでどのように変わったのかは不明だ。遠田さんの原点がファンタジーだったのは意外だが、結構が違うだけで本質は紛れもない“遠田ワールド”だった。奄美大島を舞台に、債務奴隷として人間以下の扱いを受ける兄妹の過酷な生を描く。同じような兄妹の絆に悩む現代女性のパートと交互に展開する重層的な物語だった。2022/12/27
エドワード
28
現在と過去の奄美大島を往来する、兄妹の物語。二重構造が見事だ。カヤックで航海中に迷子になった茉莉香は、人語を解する鷲から、江戸時代の奄美に生きた、フィエクサ(鷲)とサネン(月桃)の話を聴く。二人は砂糖黍畑で働き、兄妹の契りを山の神に誓っていた。薩摩による厳しい支配や奄美の珍しい風習が描かれる。ある時、薩摩の役人がサネンを見初め、妾に所望する。サネンは代わりに囲碁の好きな兄を薩摩へ行かすことを願う。しかしフィエクサは拒否し、誤って役人を殺してしまう。逃げる二人の運命は…。鷲は兄の転生か。無常と希望の終幕。2023/09/01
ykshzk(虎猫図案房)
24
奄美に行くまで、この本の存在も著者のことも知らなかった。そして、読み始めて少しして、違ったかな・・と一瞬思ったのだが、読めば読むほど凄まじく、最後はページをめくる手が止まらなくなった。黒砂糖美味しいな、などと呑気に言えなくなる話でもあるが、同時に生きる希望、人生のどこかで間違ったとしてもそれを受け止めて命終わる日まで生をまっとうするべきという喝がもらえる本だった。この世の終わりで誰かともう一度出会えるなら、それは終わりじゃなくて本当の始まりかも。島で見た植物や鳥が沢山登場したので、情景が描きやすかった。2025/04/27
baboocon
24
遠田潤子さんのデビュー作が改装新版になった。旧版はなぜか新潮文庫nexという新潮社のラノベレーベルなのが不満だったし、漫画タッチのイラストよりも新版の幻想的なイラストの方が作品に合っていると思うのでうれしい。内容は単行本や旧版で散々語ったのでここでは触れないが、微妙に加筆修正されているようなので旧版をお持ちの方でも読む価値ありだと思います。2022/12/24
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