出版社内容情報
超・肉食系女子の狂気! 愛に生きたその結末とは――リアリズム文学の最高傑作。
美貌で才気溢れる早月(さつき)葉子は、従軍記者として名をはせた詩人・木部と恋愛結婚するが、2カ月で離婚。その後、婚約者・木村の待つアメリカへと渡る船中で、事務長・倉地のたくましい魅力の虜となり、そのまま帰国してしまう。個性を抑圧する社会道徳に反抗し、不羈(ふき)奔放に生き通そうとして、むなしく敗れた一人の女性の激情と運命を描きつくした、リアリズム文学の最高傑作のひとつ。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
102
初婚が2ヶ月で破綻し、婚約者が待つアメリカへ向かう葉子は、妻子持ちの船の事務長の魅力の虜になり帰国して愛人になる。美貌で才気溢れるヒロインの造形が最大の魅力で、霧や波など自然風景を絡めた精妙な心情表現は前編から山場を形成する。彼女の突飛な言動の数々は周囲と共に読者を次々と翻弄する。嫉妬と疑惑に苛まれ、支離滅裂になっていく後編は更に精緻かつ仔細で、終盤の激情と倦怠の痙攣はまさに地獄絵図。思想に素直に生き、世俗との闘いに敗れていく彼女の生き方や痛みには、対極な性質ではあるが著者の懊悩が投影されていると感じた。2020/12/04
jam
97
実家の本棚から数十年ぶり(笑)の再読。そして、読み始めてすぐに後悔した。主人公葉子に全く共感できないことに加え、男が描く女の造詣に辟易したことを思い出したから。それでも読後、あの時代に生きた女たちの閉そく感の発露としての葉子だったかもしれないと、汲むべき景色が見えた。そして、破滅への冴えわたる筆致と情景描写の美しさは感嘆すべきものがあった。ただし、有島の最期を慮っても、作者自身を「或る男」にしてしまう「或る女」に、ただただ疲労困憊。この質量にしてわずか1年。そういう意味では、やはり力量、あるのだろう。2022/08/24
やいっち
95
有島武郎の作品は、『カインの末裔』『小さき者へ』『生れ出づる悩み』などを読んできたが、それなりに、というのが正直な感想。 だけど、この『或る女』は別格。 「個性を抑圧する社会道徳に反抗し、不羈奔放に生き通そうとして、むなしく敗れた一人の女性の激情と運命を描きつくした、リアリズム文学の最高傑作のひとつ」というが、その解釈や文学史上の位置付けはともかく、島崎藤村の『夜明け前』に匹敵する、世界レベルの小説だと今にして改めて思う。 2014/09/28
遥かなる想い
90
若い頃この本を読むのはなぜか勇気が要った。別にエロ本を読んでいるわけではないのだが、主人公があまりにも妖婦的イメージを持っている気がして ためらいがあった。理由もなく親の目を恐れて読んでいた。2004/01/01
優希
63
個性を抑圧する社会に反抗しつつも、虚しく敗れた女性が主人公。激情と運命がとことん描かれていたように思います。2021/10/26