出版社内容情報
明治以来の文学史上、屈指の名編と称された表題作をはじめ、いのちの不思議な情熱を追究した著者の円熟期の名作9編を収録する。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
105
「家霊」は既読。生活の中に晴れやかな色彩美と男女の心の機微と粋な情緒、映えでる短編集。表題作のおおらかなパトロンでもあり、実はしっかりと抱え込んでいる老獪さは天晴れとしか言えない。男を(いい意味で)駄目にする女ってこんな人なのかしら。そして食に対しての艶かしいとも言える感覚が抜きん出て素晴らしい。特に「鮨」の自分の原体験で母とのかけがえのない思い出でもある手作り鮨の描写は、つぅっと口に運ぶ指や口に含んだ時の米粒の柔らかな甘味と滑らかさ、初めてを食べた時に口いっぱいに広がる滋味などの描写は五感で楽しめる。2018/10/11
キムチ
72
初読は学生時代?お勉強の一環だと記憶。登場人物の年齢を超えるような時間に読むと人生の機微を刻んだ分、じんわり理解できるような、無意味の様な、哀れ感すら感じる手触りが逆の面白みとなった。短編集であり、表題「老妓抄」が有名だが「蔦の門」「鮨」「家霊」の細かい部分の表現∼モガモボの時代らしい臭いの表現が印象に残る。亀井氏が称えた老妓の心象∼若い男に売る媚、肢体、色気を簡単に色気の醜悪さというのは易いが「その年齢に存する哀しみ、焦燥」がさらりとした言葉で生の執念を思わせる。明治から大正の失われた情景が短い文に凝縮2025/02/13
ルカ
55
表題含む9編からなる短編集。 初めて岡本かの子の作品を読んだが、いきなり『老妓抄』で心を掴まれた。老妓なのに艷やかで粋で魅力的だ。他の作品も、仄かな想いや栄華から没落していく悲哀などが描かれているが、毎度物語に驚きと味わいがある。どの短編も個性的で心に残った。2023/02/05
メタボン
48
☆☆☆☆☆ 老成しているのに感性が迸っているような不思議な印象を残す文体に突き動かされるように読んだ。室生犀星に続き素晴らしい出会いであった。扱っている主題が独特なので惹き込まれて止まない。老妓抄・鮨・家霊は既読。マニアックな旅路「東海道五十三次」、男のいきなりの平手打ちは好きだからこそという幼さ「越年」、老婢と店番の少女との交流が味わい深い「蔦の門」、泉鏡花の如く幻想的で官能的な「鯉魚」、卑しい出自ながら先生と呼ばれたく食の道を追求する男がもの哀しい「食魔」、他に「愚人とその妻」。2017/06/25
こばまり
47
都会人の屈託が物の見事に描かれており凄味にたじろぐ。「くどい、脂っこい、お腹いっぱい」と母は腐すかの子だが私は好きだ好きだナァ。「食魔」などすっかりいじけた気分になって、読んでいる途中で立ち上がってしまった程だ。2016/11/27
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