出版社内容情報
江戸の金の流れを握る。それはお上を動かす力になる――。甲斐の農家から出て江戸で名を挙げた茂十郎は、永代橋の崩落事故で妻子を失ってしまう。だが悲嘆を糧に、茂十郎は立ち上がる。大胆不敵な資金集め、流通の構造改革、旧弊の刷新。すべては江戸の繁栄のために――。既存の枠を超えた発想と、強引なまでの辣腕で「狼」と畏怖され、歴史の闇に消えた謎の経済人を描く。新田次郎賞受賞。
内容説明
江戸の金の流れを握る。それはお上を動かす力になる―。甲斐の農家から出て江戸で名を挙げた茂十郎は、永代橋の崩落事故で妻子を失ってしまう。だが悲嘆を糧に、茂十郎は立ち上がる。大胆不敵な資金集め、流通の構造改革、旧弊の刷新。すべては江戸の繁栄のために―。既存の枠を超えた発想と、強引なまでの辣腕で「狼」と畏怖され、歴史の闇に消えた謎の経済人を描く。新田次郎賞受賞。
著者等紹介
永井紗耶子[ナガイサヤコ]
1977(昭和52)年、神奈川県生れ。慶應義塾大学文学部卒。新聞記者を経て、フリーランスライターとなり、新聞、雑誌などで幅広く活躍。2010(平成22)年、『絡繰り心中』で小学館文庫小説賞を受賞し、デビュー。’20(令和2)年に刊行した『商う狼―江戸商人杉本茂十郎』は、細谷正充賞と、本屋が選ぶ時代小説大賞、’21年、新田次郎文学賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いつでも母さん
157
はぁ・・凄い男がいたのだなぁ。「金は刀より強い」江戸の商業に生涯を捧げた実在の風雲児。帯に偽りなし、その男「毛充狼」と言う。いや、杉本茂十郎だ!支えてきた堤弥三郎が語る人間・茂十郎に共に悲しんだり憤ったり‥熱く時代を駆けた男に、蒼い焔と向かい風に立つ勢いを感じつつ、出る杭を打つ者の狡猾さを苦い思いで面白く読まされた感じ。永井紗耶子さん、好きだわ。2023/03/30
タイ子
87
「士農工商」と格付けられ、商人の立場を上に上にと引き上げようとした一人の男。甲斐から出てきた一介の奉公人・大坂屋茂兵衛、後の名を杉本茂十郎。江戸の民を幸せにしたい、その思いが次第に人から賄賂商人、山師、金の亡者などと言われ、それでも茂十郎は我が道を突き進んでいく。お上の好き放題にはさせない「金は刀より強い」信条を持ちながらも、心の中には常に永代橋の落橋で失った妻と息子がいた。渋沢栄一ほどの事業拡大はしないが、民のため社会のため力を注いだ人物がいたことを初めて知った。出る杭は打たれる事をしみじみ感じた読後。2023/04/17
fwhd8325
73
「木挽町のあだ討ち」が面白く、ならばと読んだ一冊。この物語も面白い。主人公杉本茂十郎なる人物は、初めて目にしました。自らの私利私欲ではなく未来を見据えての行動にはスカッとします。今の日本とも重なることも多く、このような人物が登場してくれないかとうらやむ気持ちもあります。さて、永井さん。この物語も十分に楽しいのだが、ある意味余分な贅肉を削ぎ落とした「木挽町のあだ討ち」の素晴らしさを強く感じることになりました。2023/08/15
タツ フカガワ
66
十一代将軍家斉の文化年間、甲斐の農家から江戸に奉公に出た男が、やがて菱垣廻船組合の再建や崩落した永代橋の架け替えなどで辣腕を振い、十組問屋や三橋会所の頭取、江戸の町年寄次席まで上りつめる。豪胆な手腕から“毛充狼”とも呼ばれたその男、杉本茂十郎(実在の人物)波乱の半生を描いたもので、面白く読了。ちなみに商人の側から見る幕末の風景は、意外や現代とほとんど変わらぬものでした。2024/04/25
ちゃとら
49
【友本】江戸後期の侍の話は多かったが、商人から見たこの時代物は私は初めてで興味深い良い作品だった。杉本茂十郎、甲斐の農家に生まれ、江戸で商人として大成しいくつもの組織の頭取にまでなる。「金は刀より強い。血と同じでとどこうれば瘤になる。」江戸幕府の腐れ具合や薩摩、紀州の懐具合を商人目線で描いている。現代の政治家にも類似している気がした。面白い作品に出会えた、友に感謝。2025/08/22