出版社内容情報
許されぬ殉死に端を発する阿部一族の悲劇を通して、高揚した人間精神の軌跡をたどり、権威と秩序への反抗と自己救済を主題とする歴史小説の逸品『阿部一族』。ドイツ留学中に知り合った女性への恋情をふりきって官途を選んだ主人公を描いた自伝的色彩の強いロマン『舞姫』ほか『うたかたの記』『鶏』『かのように』『堺事件』『余興』『じいさんばあさん』『寒山拾得』を収録。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
130
安部一族について。極端な能力主義が生んだ「悲劇」の1つと見ることも出来ます。しかし、その極端な能力主義も難治国故の1手段でしかなく、ちょうど時代の転換期が重なったことから、その「悲劇」は「時代の転換期に必要とされる生贄(これは佐藤優氏が自身の経験も交えてよく言っています)」と見ることができるのではないかと思いました。そしてこの悲劇の背後にあるはずのビハインドストーリーは一体どういうものか大変興味が湧きます。 2023/07/09
ちくわ
84
【阿部一族】阿部姓は、天皇の料理番を意味する『阿倍』に由来するそうな。自分は日本史好きなので『阿倍比羅夫』を思い出す…名前がピラフみたいで印象深い。 感想…忠臣蔵の逆バージョン?恥を嫌悪する武士の尊厳(プライド)がこれでもか!と迸る。確かに武士道の精神は美しい…だが、その美しさは多くの命を散らせる残酷さも内包する…昔訪問した知覧では複雑な思いに駆られた。 後で『仁義なき戦い』の深作欣二監督が撮影したドラマ版を観たが、相当出来が良く最後まで面白かった。しかも全編熊本弁!翻訳無しで味わえる九州人の特権に感謝。2024/10/04
ykmmr (^_^)
81
鴎外の醍醐味小説集。実は鴎外以外のモデルがいると言われている『舞姫』。内容は恋愛小説の割にさらりとして簡潔。ヒロインの狂気を表現するのに、なかなか女心の立場に立てなかったかな。時代は違えど、この部分は太宰だったらどう表現したかな?と考えてしまったり。 『阿部一族』・『堺事件』は鴎外得意の歴史編。何処か『死』を美学にする日本でも、『殉死』については戦国や江戸時代初期ではすでに賛否両論。この後に、将軍綱吉が実際に禁止をする事になる。皆さんと同じ、私も『鶏』が好きかも。2021/08/17
カブトムシ
64
私は高校時代帰宅部で、信州の山奥に家があり、一番近くの高校への通学に、1時間近くかかりました。やっと舗装工事が始まったばかりで、がたがたバスが揺れて、読書はしなかった。家に帰って受験勉強もあったが、読書をしました。森鴎外が一番好きで、もちろん活字で読みました。「舞姫」の教科書の原文もそんなに難しくはなかった。後に加藤道子さんの全文朗読のカセットテープでも何度も聴きました。そのカセットテープには「最後の一句」の上田みゆきさんの朗読もあり、今でも聴いています。ユーキャンのCDやYouTubeも聴いています。
優希
61
『舞姫』の印象が強いです。現代文の授業で読み込んでいましたが、やはり小説として読むと違いますね。恋より出世を選び、裏切られたエリスが発する一言に打ちのめされました。他の短編が薄く見えるほどの衝撃作と言っても良いですね。2023/11/30