感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
棕櫚木庵
24
1/4)みすゞの生涯を,主に弟の雅輔の視点から描いた「事実を元に創作したフィクション」(作者).視点を雅輔に置いたのは,彼が詳細な日記を残していたという資料的な理由もあったのだろうけど,主人公を,その身近にいた者の視点から描くという小説的な手法にもなっていて面白かった.さらに,菊池寛や古川ロッパが登場し大衆文化史としての一面もあるが,これも雅輔の視点から描いたからだろう.西洋史でいえば,「戦間期」の人であることに改めて気付かされた.2022/02/05
チロル
19
家本初読。金子みすゞ(本名:金子 テル)の実弟 上山雅輔(かみやま がすけ / 本名:上山正祐うえやま まさすけ)を主人公として位置付け、彼の目線から 在りし日の雅輔、みすゞ、その他 多くの彼らと関わった偉人の半生を知ることが出来ます。みすゞを好きなわたしは、彼女と過ごした家族のことをよく知らなかったのだ と思い知らされながら読みました。詩作は彼女の生き甲斐であった。彼女が自死した背景には、夫からだけではない、様々なことが重なっていたのです。彼女は、優しくて、強くて…。雅輔の良き、姉であり親友であった🍀2020/09/23
ネギっ子gen
14
「テルコキュシス スグカエレ」の電報。受取人は、後に古川ロッパの脚本家となった上山雅輔。その電報は、童謡詩人・金子みすゞ、雅輔の実姉・金子テルの死の告知だった。まだ数えの二十八。3歳の愛娘を遺しての自死だった。「生きることに疲れた」と。みすゞの生前最後となる雑誌掲載詩は、『夕顔』。<お空の星が 夕顔に さびしくないの とききました。/お乳のいろの 夕顔は、 さびしかないわ、と いいました。/お空の星は それっきり、 すましてきらきら 光ります。/さびしくなった 夕顔は、 だんだんしぼんで ゆきました>。⇒2020/07/22
真琴
12
「事実を基に創作したフィクション」とあるので、どこまでが本当のことなのかは分かりませんが、みすゞや雅輔の為人や人生、作品の生み出された背景などが分かりました。みすゞが全521作品を雅輔と八十に送ったこと、死の前日に写真を撮ったこと、ふうちゃん(娘)の言葉を「南京玉」と名付けて綴っていったこと、そして遺書の内容などは、自らの生きた証、作品を埋もれさせたくないという気持ち、残される者への配慮などを感じました。 少しずつ作品を読んでいきたいです。 ★★★★☆2022/02/17
しんこい
9
作者初読み。金子みすずは夫に詩作を禁じられ不幸になって自殺したのだと思っていたが、話はそう単純でなく養子にいった弟の生活が微妙に影響したり、投稿先の巡り合わせが悪く落ち込んだり、いろいろな掛け違えあって@どこか一つでもうまくずれていたらと思う。今や作家目指した弟のことは誰も知らずが、みすずを知らないのはもぐりと言われても仕方ないね。2020/06/15