内容説明
勢州桑名藩の岩井五郎治は、新政府の命で、旧藩士の整理という辛い役目についていた。だが、それも廃藩置県によって御役御免。すでに戊辰の戦で倅を亡くしている老武士は、家財を売り払い、幼い孫を連れて桑名を離れたが…「五郎治殿御始末」。江戸から明治へ、侍たちは如何にして己の始末をつけ、時代の垣根を乗り越えたか。激動の世を生きる、名も無き武士の姿を描く珠玉の全6編。
著者等紹介
浅田次郎[アサダジロウ]
1951(昭和26)年、東京生れ。’95(平成7)年『地下鉄に乗って』で吉川英治文学新人賞、’97年『鉄道員』で直木賞、2000年『壬生義士伝』で柴田錬三郎賞、’07年『お腹召しませ』で司馬遼太郎賞、’08年『中原の虹』で吉川英治文学賞をそれぞれ受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yoshida
202
幕末から明治へ変わる時代の転換期に生きた人々の姿を描く短編集。時代の転換期と書くことは容易だが、実際にその時代を生きた人々にとっては社会の根底を覆す激震であったと思い知る。そしてその時代は、武士の世は終わるが、武士の矜持を持った人々が世に生きた時代とも言える。この短編集で登場する様々な人物の根底に流れる意識は無私の志であり、その実践にあると思う。「西を向く侍」の勘十郎、「五郎治殿御始末」の五郎治。皆、それぞれに無私で世に尽くす矜持を感じる。翻り現代はどうか。少しでもその矜持が受け継がれていると信じたい。2018/01/08
ehirano1
135
表題作について。著者が描く「侍」は地味な場合が多いのですが、これこそが本物の「侍」なのではないかと思います。つまり浅田さんが描く「侍」は「ある時代の精神」ではないかと思うのです。そして、その「精神(≒侍)」は少なからず時代を超えて受け継がれている、そんな思いに至りました。2023/04/07
あすなろ
132
今まで普通に使ってその中を生きてきた、暦や時間が変わったら貴方はどうしますか?社会的に是とされてきた習慣が否とされたら?地位がなくなったら?つまり明治維新によって西洋暦になったり、仇討が否となったり、武士が無き者とされたり。そうした群像劇を短編で浅田氏らしく見事に詰め込んだ短編集。この過渡期・激変期の風俗や戸惑いが空気感として読者に伝わってくることは筆力と言わざるを得ない。つまりは、この短編集の一文を借りれば、世が世でなくなったのだから仕方ないのである。2018/01/30
chimako
113
時代とは時に残酷である。価値観の激変、信じるものの崩壊、相容れない変化に対する戸惑い、その流れに乗り切れず自分だけが取り残されるような焦燥。男たちは武士としてつちかった矜持だけを糧に今を生きる。旗本の心意気を持ったまま商人になった者。命の証文に時代を見極める者。暦までもが西洋化し最後のご奉公に「西向く侍(士)」を残した者。時に支配されぬ身でありたいと西洋時計に向かう父。仇討ち禁止令後の柘榴坂。表題作は泣かせる中に可笑しみがにじみ、尚更に涙が溢れる。明治を生きた清清しい武士たちに拍手喝采。2016/07/20
HIRO1970
108
⭐︎⭐︎⭐︎リハビリ7冊目。浅田さんは通算41冊目。幕末から明治初期に関する短編集。突然、商人の世の中が肯定され、馴染めずに旧習から抜け出せない人々が醸し出すちぐはぐ感からのユーモアは真面目で真剣な場面であればある程、浅田さんの真骨頂が感じられました。歴史物なのに漫画を読んだような読後感になるのは浅田さんの作品ならではですね。2019/06/06
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