内容説明
弱体化した母校・一高野球部の窮地に、コーチを託された宮本銀平。現役時分は万年補欠、今はしがない文具業界紙の編輯長ながら、宿敵の三高、資金潤沢な早慶らとの対戦を重ね、自身の野球熱も再燃していく。やがて人気作家・押川春浪のティーム「天狗倶楽部」にも引き込まれるが、折しも大新聞による「野球害毒論」の波が押し寄せて…。明治野球の熱狂と人生の喜びを鮮やかに綴る、痛快長編。
著者等紹介
木内昇[キウチノボリ]
1967(昭和42)年、東京生れ。出版社勤務を経て独立し、インタビュー誌「Spotting」を創刊。2004(平成16)年『新選組幕末の青嵐』で小説家デビュー。’08年に刊行した『茗荷谷の猫』で話題となり、翌年、早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞を受賞。’11年に『漂砂のうたう』で直木賞を、’14年に『櫛挽道守』で中央公論文芸賞、柴田錬三郎賞、親鸞賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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じいじ
77
おもしろかった。「日本の野球」の創成期を知る格好の本になりました。私の「観る野球」の原点は、六大学野球での立教大・長嶋茂雄です。神宮球場で放った左中間へのライナーのホームランは、まだ瞼に残っています。そしてプロへ…。デビュー戦は金田投手から4三振を食らいます。そして、最大のクライマックスは、昭和天皇の天覧試合で阪神のエース村山から放ったサヨナラホームラン…。とんだ脱線をしてしまいました。本作の著者・木内昇さんは女性のハズ。とても野球の専門知識に詳しいの驚きました。野球好きには堪らない一冊でした。2024/12/07
goro@the_booby
64
楽しい!面白い!すべての野球ファンに捧げる一冊です。まるで連続テレビ小説の題材かと思えるほどでした。明治後期、弱体化した一高野球部のコーチになってしまった現役時は万年補欠の銀平の奮闘?物語。ライバル三高との試合に臨みあの手この手なのだが一癖も二癖もある部員たちとの物語だけじゃなく、頑固な表具職人の父に憎み切れない義弟、文具新聞の部下たちなど愉快すぎる周囲の人々。この義弟の柿ちゃんや、部下の山藤がいいキャラクターで思わず笑ってしまうのです。野球は楽しい、面白い。先人達の想いを乗せて漸く球春到来だ!2021/02/28
ちえ
50
弱体化した母校一高野球部のコーチを任された万年補欠だった銀平。彼の周囲の人以外は全て実在した人物が出てくる。実はこの本は2回読み始め、2回とも数ページで挫折している。でも先月「かたばみ」を読み、もう一度トライ。「かたばみ」は戦前戦後の話だけれど、こちらは明治から大正、野球が根付いてきた時代の話。3度目は驚くほど面白く休む間も惜しんで読了。全国高校野球甲子園大会を主催するあの新聞社が、当時は「野球害毒論」と教育上どれほど野球が悪いかと紙面上連載していたとは驚き!新渡戸稲造はよほど野球が嫌いだったんだな…。2023/09/09
優希
49
野球の創世記と言えますね。爽やかでした。2022/08/01
てつ
46
すばらしい小説です。明治から大正という時代をみる点でも、スポーツの歴史というでも、学生スポーツのあり方という点でも。万人にお勧めしたい名作だと思います。2020/06/17