内容説明
右足骨折で入院中の、人生に疲れ果てた中年男が、病室の衝立越しに出逢った女と不思議な一夜を過ごす。それからしばらくして彼女と再会したとき、驚くべき奇跡が起こっていた―。孤独を知り尽くした中年の男と、時間の流れに逆行して生きる女との激しい愛の日々。しかし2人で同じ夢を見ることはできない…。男と女の切ない愛と孤独を、ファンタジックに描いた感動の長編小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
匠
107
ある意味ホラーだけど、ファンタジー色が強い。もっと言うと男の幻想。電車事故があったある日、主人公である男が入院している病室に運ばれてきた老女。退院した後再会した彼女は、会うたびに若くなっていき・・・という話。中高生くらいで止まるかと思ったらまだ先があり、当然周囲はざわつき始めるわけで。淫靡を通り越し不快になってしまい、最後まで読むのが個人的にはキツかった。喪失と孤独を根底に、愛するという意味の根本を追求しようとした作品なのかな。しかし曖昧さが残り、決して成功したとは思えないというのが率直な感想。2014/02/07
まふ
106
「年齢遡行若返り小説」の私にとり第4弾の作品。うだつの上がらない40代のサラリーマンの主人公が67歳の老婆と病院のベッドで妄想として交わる。その老婆がある日40代の美しい女性に変貌して目の前に現れ、それから愛の日々が続く。が、女性の睦子はどんどんと若返り、とうとう幼児にまで逆行してしまう…。小説家にとって「年齢遡行」小説は書きたいテーマのひとつなのだろうか。最後はみじめな結論になることが分かっているのに、そこに至る過程が創造力を掻き立てるのかもしれない。どうやら、似たような小説は他にもありそうだな。2025/01/11
あつひめ
51
映画にもなった作品とは知らなかった。これは読むよりは観るものかなぁと。美しいと言うのとも違う、切ないとも違う。老女から幼児へと変貌していくさまを心が揺れながらもドキドキしながら見守る男と同じような気持ちで私も読み進めた。日に日に若返る姿。この先はどうなってしまうのかそれだけが一番気掛かりだった。非現実的な出来事の中に、現実で遣り残した事、思い残した事ができる事と、そのチャンスを手に入れて逆に孤独と言うものをもっと深く味わうことになったのではないかと感じる。束の間の夢のような世界でもし私ならどうするだろう。2012/08/16
佐島楓
41
中学生くらいのときに初めて読んで、ひどくショックを受けた作品。愛ってなんだろうな、肉体ってこれほどまでにままならぬものとなってしまうのか、とずいぶん考えた。2015/03/23
kinupon
35
作者の小説家としての第一歩なんですが、先に映像の方を見てからこの本を読みました。映像の方がよりファンタジー(ホラー?)ぽかったです。個人的には、次作の「異人たちとの夏」のほうがインパクトは強いかなという感じです。2014/12/17