内容説明
「道」という文字には怖い意味がある。「女」「母」「婦」「妻」などの文字からわかる古代人の女性観は?「為」は昔、中国に象がいた証拠!甲骨文字の由来や筆記用具と書体の密接な関係、ローマ字に比べ「遅れた文字」とされてきた漢字が、コンピュータやスマホの時代には意外に便利で新しいことなど、日本人が日常的に使う表意文字の面白さと奥深さを、漢字学の第一人者が縦横無尽に語る。
目次
漢字はお好きですか?―まえがきにかえて
1 漢字を楽しむ(虫歯の漢字学;「みち」の漢字学 ほか)
2 文物と遺跡(北京図書館の『説文解字讀』;段玉裁の故郷を訪ねて ほか)
3 東アジアの漢字文化(この世に漢字はいくつあるのか;可口可楽・魔術霊・剣橋大学 ほか)
4 書と漢字(筆記用具が書体を決める;書はいつから書なのか ほか)
漢字はどこへ行くのか―あとがきにかえて
著者等紹介
阿辻哲次[アツジテツジ]
京都大学名誉教授、漢字文化研究所所長。1951(昭和26)年大阪生まれ。京都大学文学部中国語学中国文学専攻卒業。同大学大学院博士課程修了。文化庁文化審議会国語分科会漢字小委員会委員として新たな常用漢字表の作成に参加した。古代文字学についての知見と、パソコン・スマートフォンという現代テクノロジーの媒介としての漢字を研究する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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へくとぱすかる
52
あさって1月1日が正式の発行日。間一髪2010年代に読了。ユーモアあふれるエッセイで、ビデオ講座の「遥かなる漢字の旅」に出演されていた当時のままのお人柄が感じられる。「鵜」は本当はウではないとか、国字の中国語の発音はどうするのかとか、繁体字の復活の現状など、耳新しい情報も多い。石鼓の現物が展示されている状態がわかる写真は貴重。「甘木さん」という表現は内田百閒の発明だと思っていたら、そうではなかったことも個人的に楽しい情報でした。2019/12/30
tomi
31
漢字研究の第一人者による、硬軟取り混ぜた漢字にまつわるエッセイ集。古代中国で象牙が使われていたり、「象」という字ができたのは当時象が野生でいたからで、「鵜」の字は中国ではペリカンの意味し、やはり当時生息していたからだとか。「恭」が中国でまさかの意味がある由来や「̪士」の成り立ちなど、面白い話がいろいろ。2020/03/03
ま
8
アルファベットももとは表意文字だったが、いつしか意味が切り離されてしまった。漢字にもそのような動きはあった(字によってしんにょうの点の数が異なるのはある意味それによって生じた傷痕なのかもしれない)。それでも東洋人は表意文字としての漢字を守ってきた。漢字に纏わる小ネタ集だが、阿辻先生の主張が随所に散りばめられている。「伝統的な文化を背景とする漢字は、書き手の個性を縦横に発揮できる文字である。しかし…現代においては、言語表記の効率化のために文字の没個性化が主張される。漢字はまさに今、そのはざまにある。その→2020/12/08
sine_wave
8
この本の表題は気楽に読めそうだが、内容は、しっかりとした甲骨文字に始まる、漢字の歴史の本格的なものである。とは言え、漢字の歳時記・字の形・色っぽい話のコラムの気楽な文もあり、決して飽きない本になっている。2020/03/15
秋の月
6
くすっと笑えること、なるほどと感じること、小難しいこと、これらが均等に配分された本だなと思いました。なので部分読みもありだと思います。阿辻さんの実体験を踏まえた内容が豊富で興味深く、コラムは飲みの席で誰かに話したくなるような面白いものばかりでした。他の書籍と重複する部分もありましたが、よい復習ということで。2020/03/04




