内容説明
親友を裏切って恋人を得たが、親友が自殺したために罪悪感に苦しみ、自らも死を選ぶ孤独な明治の知識人の内面を描いた作品。鎌倉の海岸で出会った“先生”という主人公の不思議な魅力にとりつかれた学生の眼から間接的に主人公が描かれる前半と、後半の主人公の告白体との対照が効果的で、“我執”の主題を抑制された透明な文体で展開した後期三部作の終局をなす秀作である。
著者等紹介
夏目漱石[ナツメソウセキ]
1867‐1916。江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)に生れる。帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学した。留学中は極度の神経症に悩まされたという。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、「吾輩は猫である」を発表し大評判となる。翌年には「坊っちゃん」「草枕」など次々と話題作を発表。’07年、東大を辞し、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
1097
何度目かの再読。今回は「語り」に注目して読んだ。『こころ』は「先生と遺書」にばかり目を集めがちだが、それはテキスト全体の1/3。下は先生の語りだが、上・中は「私」の語りである。では、私はそもそも誰に向かってこれを語っているのか。その時勢はすべてが終わった"現在"である。先生の奥さんに真相を吐露しているのだともとれるし(この場合は先生の遺言を表面上は裏切ることになる。ただし、先生の真意はまた別だ)、私の次の世代の人々に語っているとも言える。また、この作品にはたくさんの"死"が語られる。⇒2020/05/21
Kircheis
773
★★★★★ 自分の中では死ぬまで絶対に忘れないであろう本。 これに対するアンサーとして、武者小路実篤の「友情」があると思う。2018/01/10
ehirano1
640
この歳になって読み返してみると、心臓を鷲掴みにされるような悲劇的恋愛小説でありながら、そこに時代変遷による価値観の相対化を融合させることで、方丈記をミクロで描いた超高度な作品ではないかと思うに至りました。2024/03/10
ちくわ
609
本=ビジネス書な自分が小説も読むようになり、今回長編を手に取る。そんな初心者なので高尚な感想を述べられず恥じ入るが、せめて素直な思いの丈を。田舎出身、都会の大学、年老いた父、恩師の存在…境遇に類似点が多く感情移入はやや強め。また本書は古典なのに読み易く、美しく、表現が新鮮で、炎天下に冷水を飲むように読み続けられた。初体験だ。内容は自分の過去/現在/近未来の混濁にも思われ、奇妙な感触を覚えた。読了後、題名と内容がこれ程同調した作品の記憶が無い…色褪せない不朽の名作が登録100冊目であった偶然が素直に嬉しい。2024/02/25
Major
593
この作品は「こころ」とする以外に、タイトルの付けようがないのではないか。3部構成だが、どの部から読んでも3つの話は円環するように編まれている。登場人物の一人である「私」が、先生からの手紙を車中で読む段になっては、もはや読み手である「わたし」が「私」に代わって、ストーリーの中に組み込まれていくように仕組まれている。「草枕」が文字面の芸術とすれば、「こころ」は文学的構成の芸術である。2つのコメントに続く2017/08/27




