出版社内容情報
鶴子、幸子、雪子、妙子、関西上流階級に生を享けた美しき四姉妹。
大阪船場に古いのれんを誇る蒔岡家の四人姉妹、鶴子、幸子、雪子、妙子が織りなす人間模様のなかに、昭和十年代の関西の上流社会の生活のありさまを四季折々に描き込んだ絢爛たる小説絵巻。三女の雪子は姉妹のうちで一番の美人なのだが、縁談がまとまらず、三十をすぎていまだに独身でいる。幸子夫婦は心配して奔走するが、無口な雪子はどの男にも賛成せず、月日がたってゆく。
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新聞書評(2013年3月~2014年12月)の本棚
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新聞書評(2016年)の本棚
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あつしの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
426
上巻は「滅びの美学」序章といったところ。蒔岡家は、物語が始まった時点で既に老舗を失い、本家の当主は銀行務め、分家の三姉妹は蘆屋暮らしだが、戦争の影は、まだ彼らには及んではいない。緩やかな川の流れがたゆたうような文体。今はもはや失われた船場言葉のリズムで語られる稀有な小説。東京生まれの谷崎の言語感覚は、さすがに天才的だ。また、随所に用いられる極微のといっていいくらいにリージョナルな地名が実に効果的。その微細な差異こそが、小説世界を構成する。近世期の黄表紙の「うがち」にも似た読み方を要請されているかのようだ。2014/03/26
yoshida
233
以前から読んでみたかった作品。昭和十年代の関西の様子が綺麗な日本語で描かれています。大阪船場の蒔岡家はやや没落したとはいえ、関西の上流階級である。蒔岡家の四人姉妹である鶴子、幸子、雪子、妙子の織り成す日々が美しい。雪子は姉妹のうちで一番の美人だが、なかなか縁談が纏まらない。見合い相手もなかなか釣り合わない。昭和十年代の神戸の生活。支那事変やドイツのオーストリア併合の描写が世相を感じる。戦前は特に暗い時代ではなく、相応に豊かでゆったりとした時間が流れていたことが新鮮だった。優しい船場の言葉にほっとする作品。2016/09/23
ゴンゾウ@新潮部
163
美しく洗練された文章にとても驚嘆した。上品で生き生きとした船場言葉で大阪の上流階級の姉妹の生活が目に浮かんでくるようだった。三女雪子の縁談を中心に当時の家族の様子を詳細に描かれている。こんなに美しくて読みやすい小説には滅多に出会うことができない。2015/01/01
黒瀬
154
『あたしかて見合いするのんは嫌やないねん』 昭和初期の大阪の旧家を舞台に、四姉妹の悲喜こもごもな日常を描いた長編。言わずと知れた谷崎潤一郎の代表作。上二人の鶴子・幸子姉妹は、彼女らとは対照的に縁談の決まらない三女雪子と自由奔放であどけなさが抜け切らない四女妙子の行く末を心配している。元々名の知れた旧家であったため、登場人物に堅い印象を持っていたのだが、なんとも仲睦まじく、互いが互いを思い合っている良い姉妹でした。纏まらない雪子の縁談や体の弱い幸子さんが無理をする度にハラハラしてしまいます。結末は如何に――2019/11/19
Nobu A
146
谷崎潤一郎著書2冊目。43年刊行。今から半世紀以上も前に執筆され、昭和天皇にも献本されたとか。こういうのを「不朽の名作」と言うんだろうな。前作「陰翳礼賛」同様、決して晦渋な表現が多い訳でもなく、寧ろ比較的読み易い筆致。ただ、この後中巻及び下巻と続き、認知資源が枯渇しそうな懸念はある。最も印象に残ったのは女言葉を見事に綴っている点。今でこそ大規模言語データが存在するが、日本語は男・女言葉が巧みに使い分けられる世界でも珍しい言語。読んでいて違和感がないし、当時としては際立っていたのでは。読書会課題図書。2025/04/27