内容説明
刑事一課のエース、上内亜梨子は焦っていた。時効まであと一箇月。眼前で取り逃した渡部美彌子の矛盾に満ちた行動、彼女の足取りを消す奇妙な放火殺人、そして美彌子本人からの手紙…何かがおかしい。この逃亡劇にはウラがある。巧緻に張り巡らされた伏線が視界を反転させる時、急浮上する驚愕の真相とは―。圧倒的なディテールと極限のリアリティで「刑事の仕事」を描く本格警察ミステリ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鍵ちゃん
49
刑事一課のエース、上内亜梨子は焦っていた。時効まであと1か月。眼の前で取り逃がした渡部美彌子の矛盾に満ちた行動、彼女の足取りを消す奇妙な放火殺人、そして美彌子本人からの手紙、何かがおかしい。この逃亡劇にはウラがある。巧緻に張り巡らされた伏線が視界を反転させる時、急浮上する驚愕の真相とは。上巻と違い下巻に入って真相の大どんでん返しが見事でした。美彌子にすっかり騙された。キャリア官僚より美彌子が本当に恐ろしい。でもこの作品は慣れ親しんだ刑事の本当の姿や仕事が表に現れていて、本当の苦労が出ていてよかった。2024/03/04
dr2006
44
時効迄は書類送検なんて出来っこない!刑事は第一次捜査権を持つ存在だ。県警本部のキャリアの指示に抗い、時効最後の時まで身柄検挙を決意した愛予署の刑事たちの姿に感服。逃走犯は予想出来たけど⒲下巻の転結と伏線回収は見事だった。他作品の印象含め作者は女性だと思っているが、実は覆面作家らしい。元警察官キャリアであること以外、性別等の素性が明かされいない。何しろ現職の時の経験が存分に活かされている為、警察組織や捜査や現場のリアリティが半端ない。一方でリアル過ぎるから、警察への配慮から覆面作家を貫いているとも思った。2022/06/01
geshi
31
火事と焼死体の身元の捜索から十年前の警察官殺しに繋がり、捜査本部に一通の手紙が届く怒涛の展開に乗せられ一気読み。警察のダメージを最小限に抑えようとするキャリア側の判断と被疑者死亡での送検=刑事の敗北であるとしてギリギリまで追い続けようとする現場の矜持とのせめぎあいが熱くて、責任をとるトップの姿が格好いい。ラストで観察の実践が結実し、貢でなければ詰められなかった犯人の物語へと届く、まさに刑事の仕事。報告書が新人の成長とミステリの伏線のどちらにも作用している構造が実にうまい。2020/06/24
ぶんぶん
28
【図書館】やっぱり、面白かった。上巻の「お仕事小説」に伏線があり、その回収の素晴らしき事。怒涛の様な「どんでん返し]、やっぱり凄いと思う。本当に時効寸前まで行ってしまう、どうなるのかハラハラドキドキ。思うに原田刑事は愛予署は「新任刑事」だが、他の部署でキャリアを積んだベテラン刑事なんだろうと思う。しかし、警察内部の事をこんなに暴露して良いのかな。為になって面白かったけど、意外に疲れた事も事実、思わず前のめりになってしまった。新しい警察ミステリへ—の誕生だと思う。直接は関係してないけど「新任巡査」も読もう。2023/01/23
ロボット刑事K
21
本人の資料がないからDNA型の鑑定が不能という設定ですが、舞台となった2010年当時ならできたはず。そう、母親との親子鑑定が。それやっちゃうと仕掛けが全部オジャンですが。刑事部長があの状況でサクッと焼死体を美彌子と認定することに違和感を覚え、さらにツッコミどころ満載な美彌子の手紙で、絶対これは何かアル!の確信に変わりました。伏線として回収して頂きましたが。結局タレコミしたのは誰だったんでしょ?時々でてくる「あっは」が鼻に付きますな。☆3つ。お仕事小説としてリアルな分だけミステリ部分の無理スジは頂けません。2022/09/25