内容説明
幼い頃に養父を亡くし、母親の愛人から日常的に暴力を受けていた刀根秀俊に、十四歳のとき初めて気の置けない存在ができた。同じクラスの美月、陽菜乃、亮介だ。四人で過ごすかけがえのない時間は、しかし、ある事件で一変する。それから二十年。秀俊は暴力の連鎖から抜け出せず、彼を思う美月、そして陽菜乃と亮介もまた、秘密と後悔にもがいていた。絶望の果てに辿り着く、究極の愛の物語!
著者等紹介
村山由佳[ムラヤマユカ]
1964(昭和39)年、東京都生れ。立教大学卒。’93(平成5)年『天使の卵―エンジェルス・エッグ』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2003年『星々の舟』で直木賞を受賞。’09年『ダブル・ファンタジー』で中央公論文芸賞、島清恋愛文学賞、柴田錬三郎賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まさきち
78
題名と冒頭の風景から爽やかな若い男女の恋の駆け引きの物語と思っていたが違っていた。各々異なる家庭の事情を抱えながら、中学で知り合った男女各2名。その中で一際劣悪な状況にある秀俊を除く3人の中には、思春期独特の甘い雰囲気を感じられながら話が進んでいく。が、中盤でのレイプ事件をきっかけに、4人それぞれを縛り付けていく闇の雰囲気が勢いをましながら、巧妙にその中に散りばめられた愛の嘘に興味をそそられて頁をめくる速度が増しました。本当に楽しめた一冊です。2023/07/05
ピロ麻呂
47
キリ番1700冊は村山由佳作品🎵おもしろかった〜結末が早く知りたくて一気読み😆中学生の仲良し4人組のうち、ひとりの少女が路上で強姦され、犯人を探して復讐するためにヤクザに依頼…そこから4人それぞれの人生が狂い始める。帯にもあったようにノワール色が強い中、4人の恋愛の行方も気になり、ページを捲る手が止まらなかった。あの時、異なる選択をしていたら、違った人生を歩んでいたかも…誰もが考えてしまうことですよね。しかしながら村山作品、だんだん過激になってません?2021/03/19
あやっぴ
34
読友さんのレビューで前から読みたかった作品ですが、本屋で文庫本を見つけてすぐに購入。仲良し男女4人組が中学生の時、とある事件に巻き込まれる。この子たちの生い立ち、家庭環境もだけど、悪い大人たちによって荒らされた人生はもう気の毒でしかない。最後までハラハラの連続で、分厚い本にもかかわらずあっという間に読み終えました。2021/02/09
あきら
29
不安定な心情を描写した沢山の言葉に魅了。 出来事のインパクトが強いんだけど、そこを固める心情の揺れ動く様を深く表現しています。 これは本で味わうべき作品だと思いました。2021/06/13
ねなにょ
27
タイトルから、ほんのり優しい雰囲気の漂う内容を想像していたら、(虐待を始め、)様々な暴力のオンパレード。刀根が中学2年生になって、初めて心を開ける友達ができて、絶望のどん底から抜け出せそうかなとホッとしたのも束の間、ある事件が起きて、それぞれが広い海にでも投げ出されたようにバラバラに。みんなが誰かのために自分の気持ちを押し殺して嘘をついて、苦しみもがく。(重い話が、)終章になって、ようやく、ちょっと彼らの未来への希望が感じられる終わり方だったので良かったけれど、いろいろと盛り込み過ぎかも…2022/05/19