内容説明
空前のバレエブームに沸く戦後。バレエ教室を主宰する波子の夢は、娘の品子をプリマドンナにすることだった。だが、夫は家に生活費を入れてくれず、暮らしは苦しくなっていく。追い詰められる波子の心の支えは、かつて彼女に思いを寄せた男、竹原だった―。終戦後の急速な体制の変化で社会や価値観が激変する時代に、寄る辺ない日本人の精神の揺らぎを、ある家族に仮託して凝縮させた傑作。
著者等紹介
川端康成[カワバタヤスナリ]
1899(明治32)年、大阪生れ。東京帝国大学国文学科卒業。一高時代の1918(大正7)年の秋に初めて伊豆へ旅行。以降約10年間にわたり、毎年伊豆湯ヶ島に長期滞在する。菊池寛の了解を得て’21年、第六次「新思潮」を発刊。新感覚派作家として独自の文学を貫いた。’68(昭和43)年ノーベル文学賞受賞。’72年4月16日、逗子の仕事部屋で自死(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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りんふぁ
1
読んだことなかったから読んでみた。戦後の日本を垣間見るかんじ。2023/09/23
mfmf
0
高校時代に読んていたけど、図書館に新装版があったので久々に読んでみた。新装版には、三島由紀夫に加えて池澤夏樹の解説がある。池澤夏樹は福永武彦の子供であって池澤春菜の父親という認識しかないが、同時代性から解説されていて納得感のあるものだった。作中にストラビンスキーのペトルーシュカが出てくるが、ストコフスキーのレコードだというので早速聞いてみた。ペトルーシュカらしい荒々しい様子はあるものの、それはアメリカナイズされていて(おそらく作者が意図した)東側の革命感はない。ここは設定ミスのように感じたが、2024/03/08
ukitama
0
現実を物語へ切り取るやり方自体が、リアリズム的であるので、物語の終わり方もこのようになるのも仕方が無いのかと、三島由紀夫の解説を読んで納得した。作者の目を通して、同時進行で進む当時の世の中の動きと、それ中で静かにすすむ、「崩壊と創造」としか言いようのない流れが読後感として残った。なんら、教訓や反感、同調、憧れ、期待などをよばない内容であったが、淡々と進む展開には、惹きつけられた。2023/12/04
NAGISAN
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没落過程にあるある資産家でバレー教室経営の妻、皮肉を得意とし、資産の無断名義変更や自己の収入は明らかにしない夫。妻は精神面とAレベルの浮気をしている。朝鮮戦争勃発直前の時代を怯え、魔界である日常生活を無気力に過ごす夫に対し、仏界の仏像の指の形で舞踊の練習をする妻、夫は魔界にとどまり仏界には入りづらいようだ。二人の子供や脇役がそれぞれにリアルに表現され、息子の友人の妖艶さが少しでている。話題になることが少ない作品で、中途半端に終わるし、消化不良の観は否めないが、余韻が残る。三島由紀夫の解説が秀逸すぎる。2023/09/25