出版社内容情報
ネームプレート工場の四人の男の心理が歯車のように絡み合いつつ、一つの詩的宇宙を形成する「機械」等、新感覚派の旗手の傑作集。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
みっぴー
63
難しそうと思って、読むのを後回しにしていましたが、逆に心が温かくなる話が多くて驚きました。一作目の『御身』は、産まれたばかりの姪っ子がかわいくてたまらない男子の話です。これが一番好きでした。次点は『微笑』。海軍に所属する数学の天才がたどった数奇な運命。零って何だ…『機械』は、ある町工場でのドタバタ劇。殴り殴り返され、の繰り返し。『睡蓮』どうしてこうなった。。。九作品中一番インパクトがあったのは『微笑』でした。天才と何とかは紙一重(*_*)2017/07/19
テル35
56
人の心情を奥底まで、「突き当たり」まで手探りして言い表す。追いつめ、突きつける文体に読み手は次第に巻き込まれていく。「私が何をして来たかそんなことを私に聞いたって私の知っていよう筈がないのだから。」たしかに私たちは、何が真実か知らされず、自分の意識さえ見失いがちだ。横光の文体は、思考も、意識も突き抜けて貫いてゆく。私たちが信じられるのは一瞬の感覚、執念のような感受だけ。「感覚は要約すれば精神の爆発した形容であるからだ」横光がたたかい続けた境地に、自分を追い込んで感じたい。そこから見えるものを。ひと筋に。2025/11/17
(C17H26O4)
49
『機械』とめどなく流出する思考をひたすら読んでいるよう。3人の男が疑心暗鬼になって腹の探り合いをする様子がコミカルです。最後は殴ったり蹴ったり。危ない化学薬品置いてあるのに。『春は馬車に乗って』罵り合い喧嘩しながらでないと会話のできない夫婦。乱暴な言葉の裏に深い愛を感じます。ラストで夫が妻にスイトピーの花束を差し出すシーンに不意打ちをくらい泣きました。『御身』姪っ子にメロメロになってしまった叔父の話。初恋しちゃった中学生みたいで滑稽です。横光利一、初めて読みました。登場人物の思考の推移が面白かったです。2018/05/13
メタボン
47
☆☆☆☆ 幼児のいたいけさが印象的な「御身」、最後の文章が限りなく美しい「春は馬車に乗って」、予想外のストーリーが面白い「ナポレオンと田虫」「時間」、筒井康隆ばりのドタバタ劇「機械」、名文にじっくりと浸る「比叡」、横光自身がモデルと思われる梶が登場する一連の作品「厨房日記」「罌粟の中」「微笑」、歌集の存在が効果を挙げている「睡蓮」。何よりも文体が魅力的で個性的な作品集だった。2016/11/06
西
37
無名劇団さんの芝居を観て横光さんを知ったので読書。大正昭和の文学のためか、思ったより苦戦した。「機械」は観劇したことを思い出して面白かった。もう一度あの芝居を見たくなった。小説として印象に残ったのは「微笑」。あの紙一重な感覚、どちらだったんだろうというので、読後感が良かった2016/10/16
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