新潮文庫<br> 山の音 (改版)

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新潮文庫
山の音 (改版)

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  • サイズ 文庫判/ページ数 387p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784101001111
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

家族という悲しい幻想。夫と妻、親と子、姉と弟、舅と嫁。日本独特の隠微な関係性を暴いた、戦後文学の傑作。

深夜ふと響いてくる山の音を死の予告と恐れながら、信吾の胸には昔あこがれた人の美しいイメージが消えない。息子の嫁の可憐な姿に若々しい恋心をゆさぶられるという老人のくすんだ心境を地模様として、老妻、息子、嫁、出戻りの娘たちの心理的葛藤を影に、日本の家の名状しがたい悲しさが、感情の微細なひだに至るまで巧みに描き出されている。戦後文学の最高峰に位する名作である。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

433
長編小説だが、16の短篇を集積した形で構成されているために、細部まで緻密に彫琢され、表題の山の音をはじめ雨や風、四季の花々の質感が実に鮮やかで、それが小説世界を支えてもいる。信吾と保子の間にはもはや対幻想はない。修一と菊子のそれは危機に瀕しているし、房子と相原は、もはや崩壊している。そうした中で信吾に忍び込む架空の幻想が菊子だ。それは失われた房子の姉への追慕であり、信吾に残された唯一の現在でもある。血縁によって結ばれた家族は共同幻想に過ぎなかった。そして、残されたのは個の持ちうる幻想でしかなかったのだ。2016/02/08

新地学@児童書病発動中

136
「山の音」という題は象徴的だ。主人公の信吾が深夜に耳にした地響きのような音。抽象的なようだが、信吾は確かにその音を聞いたのだと思う。もしかしたら、彼の胸の中で何かが崩れる音だったのかもしれない。可憐に描かれる菊子の姿は救いだが、それ以外ものは戦後の時代の流れの中で翻弄されて、変化している。信吾が愛している美の世界、日本の伝統的な社会は崩れ去ろうとしており、それが「山の音」として表現されているのだろう。短編を積み重ねるという手法が効果を上げており、登場人物達の心の動きがさざ波のように読者に伝わってきた。 2016/10/16

優希

134
日本独特の家族の閉ざされた関係が見えました。山の音に死と老いへの恐れを感じながら、昔憧れた人への思慕を募らせる信吾。息子の嫁に恋心を抱く心を軸に、家族の問題を描き出しています。友人の死、長男の浮気、子連れ出戻りの娘と、尋常でない状況が続くので鬱々とした感じを受けました。窮屈にも思える家族関係が悲しみを醸し出しているように思います。登場人物たちの心理的葛藤など、感情を細やかに描き出しているのが心にじわじわと入ってきました。暗い読後感でしたが、その描写力には圧倒される作品です。2016/02/04

Kajitt22

118
戦争の暗雲が未だ晴れない戦後の日本。老いを感じ始めた中流家庭の主人とその家族の機微、そして日本の四季の折々を丁寧でしっとりした文章で描いている。何度かでてくる主人公の夢の描写は夏目漱石の「夢十夜」のようにシュールな味もある。還暦を過ぎた男の老いと悲しみ、小さな喜びを40代の川端康成が描ききっている。やはり、この作家は只者ではありません。2019/08/30

Gotoran

96
戦後間もない頃の鎌倉の中流家庭の複雑な人間模様が、静かに淡々と描き出されている。山場があるわけでなくまた谷底もない単調な日常生活の中に登場人物たちの内面の心の微妙な揺らぎが、美しい自然や季節の移ろいとともに何気ない会話・言葉の端々に垣間見られ、家族の様々な人間模様を推し測ることができる。中心にあるのは、初老の義父・信吾と息子の嫁・菊子との微妙な妖しい関係。菊子の描き方が絶妙に旨い。流石、川端だ。 2018/05/19

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