出版社内容情報
非情な権力の弾圧と闘った映画人の生き方。
第二次大戦後、東西冷戦の深刻化を背景に米国で吹き荒れた赤狩りの嵐。米国政府はハリウッドの著名な映画人たちを共産主義者であると告発していく。そのうち召喚や証言を拒否して議会侮辱罪で
有罪判決を受けた主要な10人をハリウッド・テンと呼ぶ。
彼らは権力の弾圧といかに格闘したのか!?
「芸術における不服従とは何だろう。あなたが不服従なら、片方にあなたを
服従させようとする者がいる。しかし、あなたが勝利したらどうなる?」
「あなたが服従させる側になり、相手は不服従を貫こうとする。」
「権力と反権力もそう。」「反権力が勝利すれば、両者の立場が
入れ替わるだけだ。」「実際に歴史はそのように動いてきた。」
(本巻に収録の『チャーリー』より)。本書で描かれている映画人たちが受けた弾圧の歴史は我々日本人にとっても知るべき問題である。是非、本書を手にとって弾圧する側とされる側について、考えてみてください。
【編集担当からのおすすめ情報】
膨大な下調べを基に著者である山本おさむ氏の卓越した構成力で表現された、
映画人たちの闘う姿を堪能ください。
巻末に収録された山本氏の制作秘話も必見です。
山本 おさむ[ヤマモト オサム]
著・文・その他
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぐうぐう
24
読んでいて、20年前のアカデミー受賞式を思い出した。エリア・カザンが名誉賞を受賞したとき、スタンディングオベーションする会員らの中にあって、ステージ上のカザンを睨むように座ったままの俳優達をカメラは映していた。半世紀前、カザンはレッドパージを逃れるため、仲間の名前を非米活動委員会に売った過去があり、その抗議のために一部俳優らはカザンの名誉賞を認めなかったのだ。山本おさむの『赤狩り』は、嫌疑をかけられハリウッドを追われた者と同様、生きていくために仲間を売らねばならなかった者の苦悩も描いている。(つづく)2018/09/29
ムーミン2号
5
文化とは何だろうか? そして文化統制、あるいは思想統制とは何をもたらすのか? 表紙で刑務所に収監されているのは赤狩りで摘発されたドラルン・トランポという脚本家だ。彼は摘発以来、本名で映画の脚本をかくことは叶わなかったが、別名義で書いた作品、翻案した作品は今でも名作として残っている。そしてチャップリン。彼に手を出せずにいた赤狩り本部の権力者たちは、彼が洋行する機会を逃さず「再入国許可」を取り消すという暴挙に出た。トルーマンの時代だ。あんな時代もあったねと、のんびり言ってはいられない。時代は巡るのだから。2018/10/28
笠
2
4 「ローマの休日」編が終わり、ハリウッド・テンにストーリーの中心が戻る。フィクションの部分は多々あれど、本作に登場するのはまぎれもなく人間であるから、個人個人を善悪で断じることではなく、過ちであったと振り返ることしかできない。それは創作人物である《たれこみ屋》のクロスビーにしても、《転向者》となったドミトリクにしても、あるいはFBIのキビーに対してさえも、部外者である我々が断罪するのはおこがましい。ただ一つ言えるのは、我々にできるのは歴史に学ぶことだけで、歴史を繰り返さないためにもこういう作品は尊い。2018/11/27
Iwata Kentaro
2
3巻まで読みました。見事な作品です。日本人が大好きなオードリーヘップバーンと「ローマの休日」。そこにまさかあのような赤狩りの影響があったとは全く知りませんでした。2018/10/23
YS-56
1
恐怖と無理解は全てを狂わせる。2018/09/29