出版社内容情報
歴史にのこった「月」の漢字だけで構成した絵本。良寛・空海・顔真卿……3500年前から江戸時代までの間に優れた書家たちの手で描かれた表情豊かな「月」たちが、子どもから大人まで漢字との新しい出会いを約束する。
「漢字の絵本」シリーズは、1冊を漢字1文字だけで構成した絵本である。取り上げた1文字について、字が生まれてから今日にいたるまで約4000年の間に、どんな形の変化があったのかをたて軸に、祈りのとき、悲しいとき、酔っぱらったときなど書いた人の気分や心情をよこ軸に編みこんだ、画期的な漢字絵本である。本シリーズは、『空海大字林』『良寛名品選』など多数の字典の編纂の仕事を通して鍛え上げられた目を持つ書道史家・飯島太千雄氏が、無数の資料の中から次代にのこすべき名筆を選定し、児童文学者・乾侑美子氏が、優れた文字からたちのぼるイメージについて、飯島氏との対話を通じて得た驚きや発見を、慎重に言葉へと書き起こす作業を行ない、こうしてできあがったページにオールカラーで色づけを行なってつくりあげたものである。 1冊目の「月のえくぼ」では、中国の隋時代に書かれた墓碑銘に彫られた三日月や、空海が書いた、涙のこぼれでたような造形的な書体が、人の感情をうつして本物以上に月らしく、大人から子どもまで見る者をひきつけてやまない。