出版社内容情報
古代の解文(公開文)にして地誌、文学でもある古風土記の世界のすべて。
「風土記」は八世紀に作られた地方誌。朝廷に提出を命ぜられて、各国が物産品目、山川原野の名の由来、土地の伝承などをまとめたものです。現存するのは播磨、出雲、肥前、豊後、常陸の五か国のもので、他国の風土記は後世の写本の文章の中に引用文として部分的に残されて、その存在が推測されるだけです。 官吏が漢文で書いたいわば公用文なのですが、地誌としての歴史的文献にすぎないのではなく、文学的な味わいが楽しめる内容です。それは神話や伝説を含むことや、和語和文を生かした文章があるためではありません。校注者の植垣節也氏によれば、当時の文学というのは、現代と違っていて、漢籍の知識をふんだんに生かして、典拠のある佳句佳文をもっとも効果的に使いきることでした。その意味で、六朝風の漢文で潤色されている「風土記」の文章は、公文書であり、地誌であるばかりでなく、古代の人々の文学書なのです。 「風土記」研究の第一人者によって従来の他書とは一線を画する校注が施され、清新な訳文も付けられた本書は、待望の“古典文学”の出現といえます。
植垣 節也[ウエガキ セツヤ]
著・文・その他/翻訳
内容説明
頭注+原文+現代語訳。「三段組の古典」決定版誕生!基本的作品を網羅。権威ある執筆陣、最新の研究成果。
目次
播磨国風土記
出雲国風土記
豊後国風土記
肥前国風土記
常陸国風土記
逸文
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Koning
13
古代の観光案内として見ると意外と楽しいという罠。逸文がそれなりに纏まっていて失われた本文からうっすらと残された断片から垣間見える事物がなかなかに楽しい。やはり出雲国風土記がいいね。しかし、和尓怖い2014/04/06
恋愛爆弾
12
日本列島における少数民族は「鬼」「土蜘蛛」と呼ばれ、そのうち朝廷に逆らう者たちは全滅させられたことが肯定的に記述される。個人的には肥前国で朝廷と戦ったとされる女賊集団、豊後国の白鳥モチ変化伝説、常陸国の蛇を生んだ母親の話、出雲国における「目一つ鬼」の正体などが印象に残った。2021/03/04
てれまこし
6
国はやはりヒメに結びついている。母系集団の豪族が地域に割拠し、女が結婚しても土地から離れないのであれば、国々は統一されない。で、やっぱりあちこちに交通妨害をする荒神がいるし、まつろわぬ蛮民がいる。統一事業は軍事征伐に加えて婚姻を通じて行われた。おそらく元来は地元の神に仕える巫女が、天孫である皇室の子をミコとして産むようになった。山の神も天孫もいずれもカミであるという論理だ。そして、このミコがまた別の豪族の娘を娶る。こうして母系集団が父系の天孫族によって包摂されることにより統一されたのが日本のようである。2019/09/03