出版社内容情報
「夏目漱石論」から出発したが、批評を文芸に限定せず人間の根源的な存在にまで広げて、戦後精神を鋭くえぐりつづける文明批評家。
評論家・江藤淳は、青年期に「夏目漱石論」を書き、これまでの漱石像をくつがえして、生活者重視の視点から一人の人間としての夏目漱石の実像を構築してみせた。この画期的な評論は、近代日本文学そのものへの新たな批評でもあった。 その後に発表された代表作の一つ『成熟と喪失?母の崩潰?』では、〃第三の新人〃について論評しながら、文芸批評にとどまらず日本文化への奥深い視点をもって、母と子が密着する日本文化のあり様を批評したものである。この視点の延長線上に名作『漱石とその時代』があり、明治の時代相のなかに夏目漱石を描いて高い声価を得、野間文芸賞・菊池寛賞を受賞することとなった。続く『海舟余波』や『海は甦える』に見られるように、江藤淳はいまなお日本近代史への根源的な問いかけを続けている。 本書では、その強靭な論理の批評家の全体像を、さまざまな証言によって描く。吉本隆明・秋山駿・磯田光一・大岡昇平・安岡章太郎らによる作家論・作品論・エピソード・代表作ガイドなどで構成した。
内容説明
江藤淳の人と文学の全容を探るはじめての作家・作品論集。
目次
作家アルバム
書き下ろしエッセイ
作家論
歴史と人間
生原稿で作品を読む
作品論
インタヴュー
漱石と江藤淳
ひと
江藤淳の自選作品
代表作ガイド
年譜
収録文解説