出版社内容情報
映画「お早よう」「学生ロマンス 若き日」
「お早よう」(昭和34年)は、東京郊外の新興住宅地(大田区下丸子付近)が舞台。当時の憧れだったテレビをねだる子どもたちを軸に、住民たちのコミュニケーションのすれ違いから、大小の騒動が起こります。戦前からコメディを得意にしてきた小津の持ち味も十分に発揮された秀作。
主人公である兄弟の両親役は、笠智衆・三宅邦子。同居する若い叔母が久我美子で、彼女に好意を寄せる青年に佐田啓二。なお、小津は、本作撮影中の昭和34年3月、映画人として初めて芸術院賞を受け、「映画が芸術として認められたことが一番うれしい」と語っています。
「学生ロマンス 若き日」(昭和4年)は、下宿とスキー場を舞台に、学生たちがひとりの女性をめぐって恋の争いを繰り広げる青春喜劇(サイレント作品)。フィルムが現存する、最古の貴重な小津作品です。
【編集担当からのおすすめ情報】
「お早よう」は、本シリーズで連載している内田樹さんが、「これ1本でコミュニケーションについての講義が1年出来る」と語った面白くて考えさせられる映画です。映画のなかで、子どもたちの「オナラ遊び」が流行していますが、これは小津が戦前のサイレント時代から温めていたギャグ。ただし、音は本物ではなく、音楽の黛敏郎が管楽器によって再現したものです。
内容説明
東京郊外の新興住宅地が舞台。憧れのテレビをねだる子どもたちを軸に、住人たちのコミュニケーションのすれ違いが重なっていく。伝えることの大切さ、むずかしさが描きだされ、戦前からコメディを得意としてきた小津のもち味も存分に発揮された秀作(「お早よう」)。下宿とスキー場を舞台に、学生たちがひとりの女性をめぐって恋の争いを繰りひろげる青春喜劇。フィルムが現存する最古の小津作品(「若き日」)。
目次
「お早よう」の目線
本巻の2作
連載 現役映画人が語る小津映画の見どころ・第8回・種田陽平(美術監督)―小津さんの緻密な映画世界
ロケ地探訪―多摩川土手(東京都)、八丁畷駅(神奈川県)ほか
インタビュー 思い出の小津安二郎・第8回・司葉子(俳優)―私の生涯の師匠、小津先生
連載 「小津調」とは何か?・第8回・小津映画に流れる音楽
連載 小津安二郎・断想・第8回・コミュニケーションの深度(内田樹)
出演者紹介―名優クローズアップ・佐田啓二
連載 フランスで愛されるOZU・第8回・「お早よう」に託された主張(ジャン=ミシェル・フロドン)
連載 小津安二郎物語・第8回・『東京物語』への道