小学館文庫<br> 蝦夷地別件〈中〉

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小学館文庫
蝦夷地別件〈中〉

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  • サイズ 文庫判/ページ数 651p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784094086768
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

世界史的な視野で蝦夷の蜂起を描く超大作

国後を暗い影が覆った。長く患っていた惣長人サンキチが、ついに幽境に旅立ったのだ。和人からもらった薬を飲んだ直後の死だっただけに、毒殺の噂がまことしやかに囁かれ始める。――惣長人は和人に殺された。主戦派の若き長人ミントレを先頭に、和人との戦いを叫ぶ声が一気に高まるなか、鉄砲がなければ和人と戦うべきではないとする脇長人ツキノエの主張は次第に掻き消されがちになっていく。サンキチの歳の離れた弟で、妻とお腹の子も和人に殺されたマメキリ、さらにはツキノエの息子セツハヤフまでもが主戦論へと傾き、彼ら若い世代の長人たちによって、ツキノエの惣長人への就任は見送られることになった。ロシアからの鉄砲300挺はまだ届かない……。その頃、かの地で鉄砲の調達に奔走していたマホウスキは、頼みの後ろ盾を失ったばかりか、自らも皇帝特別官房秘密局に捕らえられ獄中に繋がれてしまっていたのだ。一方、国後ではある男の暗躍が続いていた。アイヌの和人に対する怒りを煽り、蜂起を促そうとする男の狙いとは? そして彼を動かしている人物とは? そんななか、若き長人たちはツキノエを択捉へ赴かせ、その間に事を起こそうと動き始める。

内容説明

長く患っていた惣長人サンキチが、和人からもらった薬を飲んだ直後に亡くなった。惣長人は殺されたとして、和人との戦いを叫ぶ声が一気に高まり、鉄砲がなければ戦うべきではないとする脇長人ツキノエの主張は次第に掻き消されがちになっていく。その頃、鉄砲の調達に奔走していたマホウスキは、ロシアの地で獄中に繋がれていた。ミントレをはじめ、マメキリ、ツキノエの息子セツハヤフら若者たちは、アイヌの蜂起を促す和人の動きもあって、ツキノエを択捉へ赴かせ、戦いの準備を始める。和人との戦いは、さまざまな対立を孕んで熱く燃えさかろうとしていた。

著者等紹介

船戸与一[フナドヨイチ]
1944年、山口県下関生まれ。早稲田大学法学部卒。『山猫の夏』(吉川英治文学新人賞)『猛き箱舟』(日本冒険小説協会大賞)『伝説なき地』(日本推理作家協会賞)『砂のクロニクル』(山本周五郎賞)『虹の谷の五月』(直木賞)など著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

NAO

79
再読。約束の鉄砲の到着は絶望的になったがアイヌたちの蜂起が各地で起こる。だが、ちょっとした考え方の違いや利害関係でアイヌたちがバラバラになっていくのが悲しい。そして、謎めいた登場人物たちの影の部分が明らかになっていく。船戸作品を読んでいていつも思うことだが、話はとても壮大なのに、登場人物の背景や心理描写がとにかく緻密で細やかだ。さらに、この『蝦夷地別件』は、自然描写も、厳しくも美しい。2020/01/29

kawa

63
ロシアからの鉄砲調達が計画通りにならない中、国後の実質的リ-ダ-・ツキノエの息子・セツハヤフは父を裏切って蜂起する。世に言う「クナシリ・メナシの戦い」に風雲急を告げる東蝦夷だが、アイヌ側の目算は外れて東蝦夷全域の騒乱には至らない雲行き、松前藩も幕府に弱みを見せまいと素早く鎮撫軍を編成。下巻での盛り上がりの展開に期待が高まる。2021/05/26

レアル

63
和人に虐げられていた蝦夷が蜂起。和人との戦いを決意した蝦夷だが、蝦夷同士も意見を違え一枚岩といかず同士内でも険悪な雰囲気となる蝦夷。武力の差が歴然としてる中、誇りをかけて戦うか、それとも…。和人と蝦夷の戦いを描いた作品だが、その蝦夷地を中心に藩情勢や他国事情と様々な思惑が絡み合い進む物語。戦いの結末は分かっているのに、物語の行く末が気になりハラハラしながら読んでいる。そしてラストの下巻へ!2015/09/28

キャプテン

47
★★★☆☆_「きゃぷ衛門とゆく時の旅フェア」【西暦1789年江戸時代─国後・目梨の戦い編】国後のアイヌたちがついに蜂起する、激発の中巻。しかしその戦いの、なんと、か細いことか。それは叫び、いや、ともすれば単なる悲鳴にござる。か細くても、か細いからこそ耳を塞ぎたくなる声。遠き江戸は何を思い、蝦夷地はどう変わっていくのか。弱さと強さと、アイヌ、和人、侍、坊主、入り乱れる全てを巻き込んで蝦夷地は熱く、膨張していくのがよく分かったでござる。この巻の中盤で、あの野郎だけは絶対に許さんと、男ならそう思うはずでござる。2018/02/05

翔亀

43
物語は中盤。歴史小説は結末が判っているから、敗者の歴史小説は読むのがつらいものだ。"滅びの美学"という手もあるだろうが私は好まない。その点、本書はアイヌの文化や生活について作者が共感をもって描いているだけに、アイヌ国独立とか歴史改変小説にしてしまえばもっと快感なんだろうになと思わせたりもするが、しかし過去の歴史という制約を崩さずに、アイヌ社会の矛盾と苦悩という"現実"と、そしてあり得たかもしれない"可能性"を、あえて示そうとしているところに重みがあり、しかも重苦しさの中にも洒脱があるので読む楽しさがある。2015/06/07

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