内容説明
夜の国道で道路の中央に蹲っている少年がいた。彼は、一緒に暮らしていた老人が死ぬ間際に残した言葉を守り、飼っていた蟹が海岸で産卵しようと移動するのを、命がけで守ろうとしていたのだった。それを知ったドライバーたちは、最後まで少年が見守れるように動いた。しかし、蟹と少年にはさまざまな難敵が襲いかかってくる(「妖獣鬼」)。人間の孤独や哀しみの深奥に迫った、傑作動物小説集。
著者等紹介
西村寿行[ニシムラジュコウ]
1930年香川県高松生まれ。69年に「犬鷲」がオール讀物新人賞佳作となり、デビュー。『瀬戸内殺人海流』『屍海峡』で注目される。『君よ憤怒の河を渉れ』が大ヒットして、ベストセラー作家となる。動物小説、パニック小説、ハードロマン、社会派ミステリーなど、幅広いジャンルで活躍。2007年没
北上次郎[キタガミジロウ]
1946年東京都生まれ。文芸評論家。明治大学文学部卒業。1976年、椎名誠らと「本の雑誌」を創刊。2000年まで、発行人を務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ナチュラ
19
3話からなる短編集。 ノンフィクションかと思うくらいにリアリティのある作品。 ジャンルとすれば動物小説 人間と動物の交流というか、愛情、情熱を感じる内容だった。「妖獣鬼」では、少年と犬が、蟹の産卵の旅を見守るという話なのだが、切なくて泣けてくる程の感動作。 まさか、蟹で泣けるとは...。 他に 老人と巨大怪魚(なめそ)の物語「海獣鬼」、 余命わずかな女性と、北の動物たちの物語「聖獣鬼」 を収録。 2016/07/06
Kira
15
図書館本。収録された三話は、解説によれば動物小説になるらしい。不思議な読後感を味わった。バイオレンスものばかりではなく、幅広いジャンルを手がけた作家さんだったのかと実感した。2023/05/29
ひらり庵
0
エロとバイオレンスの作家が残した動物小説集。徳間文庫「捜神鬼」では4作品収録らしいが、この再刊では「痩牛鬼」がカットされている。なぜ選者はそうしたのだろう。おかげで徳間文庫版を古書で探す羽目に…。2015/06/22