内容説明
香港でわかれた女性レイニー・ラウに主人公が二十五年ぶりに再会を果たす表題作をはじめ、借金とりたてに訪れたやくざと主婦の危険な関係を描いた「花におう日曜日」、美しい背中の女性と知り合い、著者自身の小説観まで投影される「ここから遠く離れて」など、静かに心を打つ八篇所収。あなたが出逢えたかもしれない「恋人」たちがきっとここにいる―珠玉の恋愛小説集。
著者等紹介
打海文三[ウチウミブンゾウ]
1948年東京都生まれ。早稲田大学卒。93年『灰姫鏡の国のスパイ』が第十三回横溝正史賞優秀作に。翌年発表の『時には懺悔を』が各方面で絶賛される。03年には『ハルビン・カフェ』で第五回大藪春彦賞を受賞。04年刊行『裸者と裸者』、06年刊行『愚者と愚者』は戦争文学の傑作として話題に。07年10月9日、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
160
これまで文三さん作品を何冊か読了してきましたが、やっぱり書ける人はなんでも書けてしまうんだなと思わせてくれる素晴らしい恋愛短編集です。過去読了作品はどれも見事なくらいバイオレンスカラーの作品が中心でしたが、本作はガラッと雰囲気が別人のようなキレイな恋愛モードです。特に情景の美しさは終始、うっとりする叙述で、これまでの作品のようなキワどい表現は完璧に封印しております。男女の間で繰り広げられる様々なやりとりや駆け引き、おしゃれな会話が胸にしっとりと響きます。きっとオジサンの今だからこそいいのかもしれませんね。2016/12/23
星落秋風五丈原
29
読んだ時点で、その恋愛が過去のものになっており、主人公自身が距離を置いて語っている恋愛を、読んでいる私達がまた客観的に眺めるかたちだ。当の恋愛から遠く離れてしまった気がして、どんどん引き込まれるという感じではない。「どんな恋人も、すでに用意されている恋物語を生きることしかできないのよ」「あなたは、彼をどう愛していいか、わからなかったのよ」良くいえばお利口な、悪くいえば随分と人ごとのような台詞が続くので、恋愛真っ最中の人には物足りず、恋愛を終えた人には、どこか懐かしさを感じさせるかもしれない。2008/11/07
ken_sakura
27
とても良かった。表題作P23「恋に落ちるってね、世間からも落ちていくことなの」と十六歳の娘に言わせて、違和感無く物語が流れる雰囲気が好き。エッセイの風味も漂う八編の恋愛短編集。総じて物語は密やかで陽性。女性がカッコ良いという印象。「胸が痛い」のラストを腑に落とせなかった。誰か読み解いて下さい。表題作の佐伯、「満月の惨めで、かわいそうな」の満月、「胸が痛い」のホンヒが好き(*^^*)著者自身が主人公のような「ここから遠く離れて」を楽しく読んだ。映画「ゴーストワールド」を観てみたい。2017/10/28
さゆ
24
伊坂さんのエッセイを読んで打海文三の本をはじめて読む。なるほど、伊坂さんのおっしゃる通り。1948年生まれの方とは思えない若々しい感性。「ここから遠く離れて」が、好き。私に「体験の貧しさ」と「その自覚」があり、そして「書き言葉の訓練」ができたとして、仮に、その結果、小説が書けたとして、その小説の、タイトルを変えろと言われたら、私はかなりダメージをくらうだろう。ああ、こんな小説家の本を、今まで読んだことがなかったなんて!でも、今は出会えたことに感謝しよう。伊坂さんに感謝しよう。2011/01/24
しーふぉ
18
伊坂さんがエッセイであまりにもこの人の作品を激賞しているので読んでみた。大人な恋愛物の短編集です。作品によって好き嫌いありましたけど、他の本も読んでみたい。2016/05/22