内容説明
田口潤は、14歳の中学生。3年への進級を機に、日記をつけ始めた。毎日彼が記すのは、実の父親の死後、母親の新しい恋人になった加瀬という男と3人での同居生活。仕事をせず、次第に母親に暴力をふるうようになった加瀬と、恋人に盲目的に尽くす母親。理解できない彼らの関係に怒りを覚えつつも、ただ母親の幸せを願う潤だったが、やがて彼は不吉な事件に巻き込まれていく―。事件を追う刑事が、少年が綴った日記から明らかにしていく衝撃の真実とは?家庭に潜む暗闇を抉り出した、桂望実渾身のデビュー作。
著者等紹介
桂望実[カツラノゾミ]
1965年東京都生まれ。大妻女子大学卒業。会社勤務、ライターを経て、2003年に『死日記』にて作家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いつでも母さん
73
ただただ、切なくて哀しくて、潤の冥福を祈るのみ。あの世ではずーっと笑顔でいられるように・・『母親』を放棄した女を許せない!この怒りの行き場が無いよ(泣)戸田刑事の優しさも今は虚しいが、きっと、ずっと弔ってくれることだろう。2015/07/06
はつばあば
68
涙がこぼれる。親に恵まれない子がここにもいた。小説の中の話として片付けられる問題ではない。新聞紙上を賑わす育児放棄。出産とは大変な想いをして、育てていく覚悟を示す場だと思う。人は犬や猫より劣ってきたのだろうか。人にあるまじき振る舞いをすれば「犬、畜生にも劣る」とまで云われてきたことを、いとも簡単に・・。それでもこの少年は母を愛した。どうしてそこまで愛することが出来るのだろう・・だからこそ周りの人達に愛されたのだ。心のつぶやきが日記。こんな悲しい日記を、もうどの子にも書いて欲しくない。2015/08/20
きさらぎ
64
依存性の強いダメ母親の心配をし、その幸福を願う15歳の男の子が主人公。母親を守るために彼はどういう行動をとったのか、気になって一気読みでした。今どき、子供より男を選ぶ母親はたくさんいるが、潤のように純真な中学生は少ない。イジメや凶悪犯罪の低年齢化で自分の感覚がマヒしているのだろうか。 潤の周りには良い人が多かったが、肝心の母親だけがダメ人間。それでも母を慕う子どもの気持ちと結論に涙…。 2015/07/27
hit4papa
57
シングルマザーの母親に愛人ができたことからネグレクトをうける少年の日記です。DVの父親が事故死した後、転がり込んできた母の愛人。母から女へ変わってしまった母親。直接的な虐待はないものの、主人公の人生が暗転していきます。まったくもって悲惨なお話しですが、酷い扱いをされ続けながら母親を慕う主人公の心を掘り下げきれていないからか、ぐさりと響きてきません。主人公の生命が脅かされ続け、そして...となるラストで共感することがないのです。日記の合間に語られる、刑事、母親らのサイドストーリーも本編に効いていないですね。2019/01/20
papako
54
もしかしたら作品初読みかも。読んでいて辛かった。日記で綴られる中学生の母への想いや、友達との日常が胸にせまってくる。淡々と書かれた日記だけに、その裏に込められた想いがとてもとてもつらい。冒頭部分でミスリードされそうだっったが、真実はさらに悲しいものでした。戸田刑事の言うように、小野と先生、専売所のおじさん、用務員さんがいてくれてよかった。同じ日記ものでも『絶望ノート』とは大違いでした。さてさて、次は『き』2015/10/31