出版社内容情報
尊厳ある死を迎えるための老詩人の試みとは
広告制作会社でクリエイティブ・ディレクターとして働く42歳の私は、CF撮影で17歳のモデル、サキと知り合う。自宅が近いということもあり、サキを送って行くが、彼女は途中コンビニに立ち寄り、大量のパンと菓子を買い込み、「あなたの部屋に連れて行ってください」と懇願した。私の家に着くと、サキは購入した食べ物を一気に食べ、今度はそれをすべて吐いた。案じて私がサキの肩を抱くと、彼女は「あたしと、セックスしたいですか」と訊く。そして、「でも、するのは祖父の部屋だけにしてください」と続けた。後日、サキの祖父の部屋に行くと、そこには斑ボケの始まった78歳の老詩人、長谷川がベッドにひとり横たわっていた。長谷川はすでにほとんど寝たきりで、下の世話も自らままならずの状態。私はサキに頼まれ、長谷川を風呂に入れるが、老詩人の刺激的な言葉に共鳴するものを感じるのだった。以後も長谷川の部屋を訪れることになる私だったが、ある日、この老詩人の口から、彼が心に秘めていた計画を打ち明けられるのだった。
【編集担当からのおすすめ情報】
著者の長薗安浩氏は、本の情報誌として創刊された「ダ・ヴィンチ」の初代編集長。本作品の「祝福」は、すでに「文学界」などで小説を発表していた長薗氏が、初めて刊行した長編書き下ろし作品です。2002年の発表ですが、すでに老人の尊厳死の問題を正面から扱っており、来たるべき高齢化社会をいち早く透視していた小説でもあります。文学的完成度も高く、作家の盛田隆二氏も巻末の解説で「冒頭からラストまで、エッジの効いた日本語が吹きこぼれるように続く」と高評価されています。これまで文庫化されていなかった本作品を、こうして新たに世に問う機会を得たことは、編集者としてもたいへん光栄なことであると考えています。ぜひ、ご一読ください。
長薗 安浩[ナガゾノ ヤスヒロ]
内容説明
広告制作会社に身を置く私は、CF撮影で十七歳のモデル、サキと知り合う。自宅が近いということでサキを送って行くが、彼女は途中コンビニで大量のパンと菓子を買い込み「あなたの部屋に連れて行ってください」と懇願した。私の家に着くと、サキは購入した食べ物を一気に食べて今度はそれらをすべて吐いた。案じて私がサキの肩を抱くと彼女は「あたしと、セックスしたいですか」と訊く。「でも、するのは祖父の部屋だけにしてください」と続けた。サキの祖父の部屋に行くと、そこには斑ボケの始まった七十八歳の老詩人、長谷川がベッドに独りで横たわっていた。
著者等紹介
長薗安浩[ナガゾノヤスヒロ]
1960年長崎県生まれ。南山大学卒業後、リクルート入社。「就職ジャーナル」、「ダ・ヴィンチ」編集長などを務める。99年、小説「ウェルウィッチアの島」を「文學界」に発表。2001年退社して執筆に専念(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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