出版社内容情報
異才・荒木一郎の幻の青春小説が甦る!
〈1960年代、「ありんこ」という名の小さなダンモ喫茶があった。……十八歳から二十歳まで、私は、ダンモのバンドを持ち、ドラムを叩いていた。街には、チンピラのヤクザがあふれていたが、私たちは、それとは違う意味の不良だった。私は、いつか小説を書こうと思った。そこに起こった、その路地裏で起こったいくつもの出来事、いくつもの青春をジャズの音にのせて書いてやろうと思った〉(荒木一郎)
あの荒木一郎が、モダンジャズに魅入られた若者たちを、ジャズの名曲にのせて描いた半自伝的青春物語。そこには都電が走りミニスカートがあふれる懐かしい東京があり、酒と煙草、そしてハイミナールに溺れる若者たちがいた。
本書は、若さの残酷性と繊細な感性に彩られた見事な傑作である。
【編集担当からのおすすめ情報】
巻末に著者による書下ろしエッセーを収録。
解説は川本三郎さん。
内容説明
高校生の“僕”と、渋谷百軒店にあるモダンジャズ喫茶「ありんこ」にたむろする愛すべき不良たち―一九六〇年代、東京オリンピック前夜を背景に描く青春小説。
著者等紹介
荒木一郎[アラキイチロウ]
1944年生まれ。俳優、歌手、作曲家、作家、マジック研究家など数多くの貌を持つ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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風眠
27
長い休みが取れた時、東京のジャズバー巡りをしたりする。狭い空間の中、手を伸ばせば届きそうなくらいの近さで、ベテランジャズミュージシャンの奏でる音楽にたゆたう。知り合いのミュージシャン達は、いい年した私を未だに「お嬢ちゃん」と呼ぶ。格好つけることがキザにはならず、板に付いている大おじさん世代のミュージシャン達。1960年代、オリンピック前の東京。酒と煙草と女と不良とハイミナール。モダンジャズを「ダンモ」と呼び、裏路地が彼らの生きる世界。大おじさん世代のミュージシャンが青春を過ごした時代。私の知らない時代。2015/05/21
もりくに
21
坪内祐三さんの「文庫本宝船」に教えてもらった本。若い人は知らないだろうが、俳優として、素敵なバイプレーヤーで 「今夜も踊ろう」などの歌を歌う才人、荒木一郎さん。60年代前半の、ダンモ(モダン)ジャズ喫茶「ありんこ」に集まる若者の青春グラフィティー。高校を出て、大学に行かず、サラリーマンにもならず、ジャズで食う日々。それまでさんざ酒と煙草と「ハイミナール」をやって、二十歳になって、大人に向かって背伸びする秘密の匂いが消えたとは、繊細。ずっと近くにいた京子への一途な思いが、切ない。文章が、とてもしゃれている。2017/10/10
tjZero
7
1962年の渋谷、道玄坂のジャズ喫茶”ありんこ”にたむろするハイティーンの少年たちの青春物語。バンドを組み、ダンスパーティーを催し、女子をナンパし、意外とピュアな恋をする。地元のヤクザとトラブり、デモ学生とケンカし、睡眠薬中毒でラリってハイになる。東京五輪を控えて”愚連隊防止条例”が施行。海の向こうでは、マリリン・モンローが謎の死を遂げ、ケネディ大統領が暗殺される。ザワザワした世情の中、少年から青年へと、不穏な二十歳前を駆け抜けるピカレスク・ジュヴナイル。2021/02/19
志波昌明
4
歌手の荒木一郎の自伝的な青春小説。舞台となっているのは、1960年代の東京の渋谷や新宿で、109もなく、都電が走っている。街にはチンピラがあふれ、猥雑な雰囲気のなか、モダンジャズのバンドを組み、恋に友情に積極的に街に向かって行く主人公の姿が描かれる。文章がドライで、主人公も一本芯を持って行動していて、かっこよかった。2015/02/16
Natsuhiko Shimanouchi
2
デビュー前にジャズバンドでドラムをやっていたという荒木一郎自身のハイティーン時代をモデルとした半自伝的小説。荒木一郎版「青春残酷物語」。60年代オリンピック前の渋谷と実在したジャズ喫茶「ありんこ」。当時の街の息吹のようなものも伝わるし青春小説としてすごく面白く読めた。出来ればもっと若いうちに出会いたかった。2014/11/06
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