出版社内容情報
あの不朽の名作『二十四の瞳』の著者・壺井栄が遺した、もうひとつの児童文学の名作長編。それが本書だ。 一人息子を戦争で亡くしたおとらおばさんと、病気で母を失った一郎、四郎の兄弟。愛する者をなくした者たちが悲しみに耐え、助けあい、懸命に歩いていくうちに傷ついた心を結びあわせていく。オリーブの島、小豆島を舞台にくり広げられる、心温まる愛情の物語。芸術選奨文部大臣賞受賞作。
内容説明
故郷の風土に根ざし、戦争への怒りと人間への愛情を込めた作品を数多く遺した壼井栄。映画化もされた『二十四の瞳』はあまりにも有名だが、それと並ぶ著者の長編児童文学の傑作と評されているのが、本作品である。戦争でひとり息子を亡くしたおとらおばさんと、病気で母を喪った兄弟。愛する者を失った悲哀に生きる者たちは、それでもなお前を向いて助け合い、やがて心を結び合う。瀬戸内・小豆島を舞台にくり広げられる、他では読めないとっておきの名作を文庫化。
著者等紹介
壺井栄[ツボイサカエ]
1899(明治32)年、香川県小豆島生まれ。内海高等小学校卒業後、郵便局、村役場等勤務を経て、1925(大正14)年上京。同年、同郷の壼井繁治と結婚。1938(昭和13)年、「大根の葉」を発表し、以後作家活動にはいる。『暦』『柿の木のある家』『二十四の瞳』等、故郷の風土に根ざした、温かな作風の作品を多数残した。女流文学賞、芸術選奨文部大臣賞等、受賞。1967(昭和42)年、没
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感想・レビュー
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ykmmr (^_^)
121
作者の代表作の1つ。更には、こちらも舞台は『小豆島』。更には、太平洋戦争も時代背景にあるのも同じ。戦争で、夫と子供を亡くしたおとらおばさんは、この場所で、孤児院みたいな事をしている。そこに、終戦直前にあった『熊谷空襲』にて、家族を失った一郎という子供が加わる。小豆島の風情と暮らしに合わせて、皆で農作業をしたり、学校に通ったり。一郎もおとらおばさんと周りの子供たちに支えられ、傷が癒えていく。最後には行方不明の父も加わり、また1つの大家族が出来ていく。内容としては、中々重いものの、2023/04/13
たぬ
27
☆3.5 戦後間もなくの小豆島。おとらおばさんと子供たちの交流が素朴で温かい。父は行方不明のまま病気の母と小さな弟とともに熊谷から来た一郎にとって世話好きで懐が深いおばさんの存在はものすごく大きいよね。友達への誕生日プレゼントに悩むさまと熊谷空襲を語るシーンが特に沁みた。2022/01/02
鐵太郎
20
戦後の動乱期、戦争で夫と一人息子を失ったおとらおばさんと、彼女の遠縁の両親を亡くした二人の子供。一人食べるのもやっとの、先の見えない暗い時代の中で、三人は明るく生きようとふんばります。いろいろな世相を描きつつ、この物語は今になにを伝えようとしているのか。 ──読んで、心が温まる本です。人生の中で、あと何冊こういう本を読めるのかなぁ。 2004/11/20
ろし
18
情愛の深いおとらおばさんは、壺井栄さんそのものなのでしょう。小豆島で伸びやかに暮らす子供達、その姿が生き生きとしているぶん、戦争のもたらす悲劇が、より胸に迫ってくる。おとらおばさんが子供達に話し掛ける。『おとらおばさんみたいながらがらでも、英霊のむすこのこと思い出したら、ほら、こんな、なみだがひとりでにわき出してくるもん。みんな、英霊なんぞに、なりなさんなよ。』みんな、しゅんとしたなかで、『日本は戦争ほうきしたもん、もう大丈夫だ』と一人の子だ太鼓判を押す。憲法9条は守らなければと改めて思う。2015/05/11
紅花
18
私が今の娘の年(小4)夢中になって読んだ壺井栄さん。内容をすっかり忘れてしまっていたが、とても面白かったことだけ覚えている。どんなドラマチックなお話かと、期待感を持って読んでみると、予想外の淡々と進む日常。美しい情景。そこに潜む戦争の傷跡。勿論、今の私も夢中に読んだ。だけど、10歳の私が夢中になって読んだことがとても意外。今の人気の児童文学にはファンタジー性や冒険が多いけど、こんな内容でも子ども心を奪うことに気づく。子どもの持つ生きる力、純粋な心、そして反戦。静かな内容とは裏腹に、強く訴える物がある。2015/03/18