出版社内容情報
自由を求め、果敢に塀を乗り越えた囚人たちの物語。
脱獄後、裁判官になった男や社長になった男、夜な夜な牢を抜け出して逢い引きしていた女……。集団脱獄や超法規措置で出獄する赤軍派。自由を求め、果敢に塀を乗り越えていった囚人たちの波瀾に満ちた物語。脱出したところで、やはり管理された社会。管理される側が管理なれして、自由な世界への強烈な脱出意欲やエネルギーを失った現在、塀の内と外での管理の合理化、効率化の差はせばまり、脱獄の時代は挽歌を奏でている。解説・朝倉喬司。
内容説明
看守の目を盗んで、足もとに落ちている針金を拾う。風呂り上りの、やわらかくなった掌を房の鍵穴に押しつけて型を取る。それにあわせて針金を「鍵」に仕上げる。夜毎、看守の足音に耳を澄ませて、巡回の足どりのパターンを読み取り、決行すべき時間帯を割り出す…。本文冒頭に出てくる白鳥由栄の脱獄準備の一端。ここにほうふつとするのは、脱獄を決意した人間の、目的へ向けた人間的諸力の総動員ぶりであり、環境の微細なデテールに向けられた諸感覚の並外れた集中度である。
目次
プロローグ
第1章 限界に挑む根性とテクニック
第2章 脱獄者人生の栄光と悲惨
第3章 やむにやまれぬ男の意気地
第4章 高い塀を自在に出入する異能者たち
第5章 表門から出ていった“脱獄者”たち
第6章 監視する者、される者のねじれ相関
第7章 暴力中央突破の猛者たち
第8章 講談と現実のはざまに立って
第9章 一点ぴかりと光るこんな手段
第十章 東と西―ここが、これだけ違う
エピローグ