出版社内容情報
イタリアの日常に潜む美しいものを描く
イタリア在住40余年の著者が描く、あまりにドラマチックな15話。ルネサンス時代から続く港町で、ペストの時代の感染との戦いに思いを馳せる『リヴォルノの幻』、サルディーニャ島でローマ時代から続く養蜂家一族の知られざる生を描く『香草』。代々本を行商してきた村人と、素朴で味わい深い食生活を描く『旨味』、極東で宣教する老牧師との対話を描く『聖痕』ほか深い人間模様を味わえる15編。
【編集担当からのおすすめ情報】
緊急非常事態宣言の出ているイタリアの若者の声を
著者が自ら取材してアップするweb「デカメロン2020」
内容説明
イタリア往還四十余年、珠玉のエッセイ十五篇。伊日財団ウンベルト・アニエッリ記念ジャーナリスト賞受賞(2019年度)
目次
壁の中の海
辛い味
私の宝石
地響き
傷の記憶
建築家のカーディガン
迷える庭園美術館
口紅
サルデーニャの蜜蜂
満月に照らされて
波酔い
麝香
寡婦
聖なる人
リヴォルノの幻
著者等紹介
内田洋子[ウチダヨウコ]
1959年神戸市生まれ。東京外国大学語イタリア語学科卒業。通信社ウーノ・アソシエイツ代表。2011年『ジーノの家 イタリア10景』で「日本エッセイスト・クラブ賞」「講談社エッセイ賞」を受賞。2019年「ウンベルト・アニエッリ記念ジャーナリスト賞」受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
348
この人の本を読むと、いつもながらそのイタリア感の横溢に全身を包まれる。どのページにもイタリアの香りがするのである。それはけっして陽光溢れるなどといったステレオタイプのそれではない。ほんとうにライブなイタリアがここにある。また、彼女が知り合うイタリア人は、誰もが何と濃密な人生を送っていることだろうか。かえりみて自分の人生の浅薄さに落胆するほどに。そして、これらはエッセイなのだが、それぞれの各篇はあたかも小説であったかのような感慨を読後にもたらすのである。2023/11/29
どんぐり
84
内田さんのイタリアをめぐる最新エッセイ15篇。本を売り歩く「壁の中の海」、船上生活の「波酔い」、ジーノの家の「満月に照らされて」など、どれも内田作品で読んだことがあるような既視感。ミラノにヴェネツィア、サルデーニャに、よもや書くネタが尽きてしまったわけじゃありませんよね、内田さん。次回作に期待しましょう。2021/06/11
アキ
79
イタリア在住30年を超えて、同じ国内でもミラノ・南部カラブリア・リヴォルノと地域毎に違う街の歴史は、幾千もの無名の人達の営みが積み重なって成されるもの。ふとしたきっかけで知り合った飾り気のない市井の人々の人生の断面が15篇、著者の目を通して語られる。いつものような匂いたつような妖しさを、60歳を超えた著者に期待するのはお門違いなのでしょう。題名と表紙の写真が魅力的なのはいつも通りですけれど。蜂蜜は島のエキスだ「サルデーニャの蜜蜂」ミラノの特産品はお金だろう「迷える庭園美術館」など、小気味いい文章たち。2020/07/09
pohcho
58
冒頭の一編がすごい。父母から離れて独りぼっちになり、大好きな本を抱きしめて、地下の真っ暗な防空壕の壁を一心不乱に舐めた・・。ホロコーストを生き延びたユダヤ人女性が語る、十歳の少女の頃の思い出。短いエッセイなのに、一本の映画を見たような・・。「満月に照らされて」「聖なる人」もよかった。フィクションではないので、綺麗にまとまらない苦い話も多いけど、それもまた人生。異国に住みながら、こんなにも多くの人と、こんなにも深く関われるなんてすごい、といつも思う。装幀もとても美しい。珠玉のエッセイ集。2020/06/06
kawa
33
イタリア在住40年で巡り合った人々との交流を描く、著者初読み。「馴れたはずの匂いや手触り、味、気配、音や光が、ふとした拍子に、沈んでいた記憶を呼び起こす。」(著者のインタビューのネット記事引用)、こう言う感慨は良くあるのだが、何気ない人々との交流をドラマチックに仕立て上げる力量が印象的。じっくり再読して味わい直したい、他作品も読んでみたい欲求を引き出される魅力的な作品でした。2020/07/15