黒澤明 樹海の迷宮―映画「デルス・ウザーラ」全記録1971~1975

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  • サイズ A5判/ページ数 639p/高さ 22cm
  • 商品コード 9784093884259
  • NDC分類 778.2
  • Cコード C0074

出版社内容情報

黒澤のソ連映画『デルス・ウザーラ』の全貌

公開40周年を迎える、名匠・黒澤明のアカデミー外国語映画賞受賞作『デルス・ウザーラ』。巨匠初の外国映画(ソ連)にして、壮年期から晩年の円熟期への創作の画期ともなった作品です。自然人デルスを通して、文明社会の奢りを告発し自然との共生を謳う極めて今日的なこの作品は、しかしこれまで正当な研究・評価の対象となることはありませんでした。謎に包まれたこの作品の深部に切り込んでいくのが本書です。黒澤明研究史上、初めて公開される盟友・野上照代氏の撮影日誌、ソ連側助監督・ヴァシーリエフ氏による現場記録、関係者へのインタビューをもとに、過酷な撮影現場と苦悩する黒澤の姿が赤裸々に描かれていきます。ソ連からの帰国時に、自力歩行も困難なほど消耗した過酷な撮影を経てなお「創るということは素晴らしい」と自ら語った、映画製作の“天国と地獄”が余すことなく描かれた、従来の黒澤明研究と一線を画する濃厚なドキュメンタリーです。またこれも初公開となる幻の完成シナリオも収録します。基調原稿として池澤夏樹氏による特別寄稿のほか、フランシス・コッポラ監督、主演のユーリー・ソローミン氏のコメントも掲載いたします。


【編集担当からのおすすめ情報】
黒澤明の映画創作に関する書籍は多数ありますが、どれも評論家や研究者など、映画現場以外の著者によって書かれたものでした。本書は、黒澤監督の映画撮影の現場に生涯よりそった野上照代氏が初めて公開する撮影日誌と、ソ連側助監督の精細な記録から再現された、超一級の史料価値を持つドキュメンタリーです。巨匠・黒澤の撮影現場の実態が生々しいまでに描かれ、人間として苦悩する姿には従来の黒澤明観を覆すインパクトがあります。本書を経験しなくては、もはや黒澤映画は語れません。

内容説明

監督生命の窮地に追い込まれた世界の黒澤明が、再起を期してシベリアの密林に分け入り、想像を絶する困難を乗り越えて製作した映画『デルス・ウザーラ』。映画史の謎とも呼ぶべき撮影の全貌がついに明らかになる。誰がソ連での映画製作を実現させたのか。幻に終わった三船敏郎の主演の真相など、製作から40年の時を経て、次々と浮かび上がってくる新事実の数々。初めて公開される野上照代の詳細な撮影日誌をベースに、ソ連側助監督の記録と関係者へのインタビューで『デルス・ウザーラ』撮影の全日程を再現、誰も知らなかった黒澤組の映画撮影の現場が明かされる迫真のメイキング・ドキュメンタリー。未公開のシナリオ第一稿と幻の改訂稿の抄録に加え、40年ぶりに発掘されたシナリオ註付き「決定稿」を完全収録。

目次

1 特別寄稿・監督の中の魔物(池澤夏樹)
2 『デルス・ウザーラ』への道(栄光の映画人生;大ヒット伝説の真相 ほか)
3 『デルス・ウザーラ』撮影日誌(ソ連側の受け入れ準備;黒澤、モスクワに到着 ほか)
4 シベリアでの激闘を終えて(帰国第一声;待望の日本公開 ほか)
5 脚本で観る『デルス・ウザーラ』(第一稿梗概(1973年4月28日脱稿)
第二稿梗概(1973年9月14日脱稿) ほか)

著者等紹介

野上照代[ノガミテルヨ] [Василбев,Владимир Николаевид]
1927年生まれ。戦後、出版社勤務の後、恩師・伊丹万作の遺児(伊丹十三)の世話を頼まれ京都へ移住、大映京都の記録係に。1949年『羅生門』に参加、黒澤明と出会う。以後東京へ戻り『白痴』(51)を除く全ての黒澤作品で記録、制作助手を勤める。かたわら随筆も手がけ、第5回読売「女性ヒューマン・ドキュメンタリー」大賞の優秀賞受賞作(84)が、後に山田洋次監督『母べえ』(02)として映画化された。2010年、映画功労者に贈られる川喜多賞を受賞

ヴァシーリエフ,ヴラジーミル[ヴァシーリエフ,ヴラジーミル]
ヴラジミール・ニコラエヴィッチ・ヴァシーリエフ。1939年生まれ。1955年よりモスフィルムに勤務。小道具係、助監督などを経て、自身の脚本で短編映画8本を監督。1973年当時はモスフィルム撮影所・第3制作グループに所属し、『デルス・ウザーラ』の撮影ではチーフ助監督を務める。その後、このときの記録をまとめたドキュメンタリーフィルム「デルス・ウザーラの受賞」「黒澤明 デルス・ウザーラを撮る」をモスフィルムで製作。1980年にはマクシーム・ムンズークを描いた「スクリーンへの道」を上梓した

笹井隆男[ササイタカオ]
1956年生まれ。アートディレクター。映画宣伝、電器メーカーの広告製作プロダクションを経て、1989年、ニューヨーク近代美術館(MoMA)パーマネント・コレクション収蔵を機にササイデザインを設立。映画・音楽を中心としたエンタテインメントのアートディレクションとデザイン、映像の製作、CIをはじめとするブランデイング全般を手がけている。長年にわたり黒澤明監督関連の映像商品や書籍などを多数製作。現在は日本映画データベースの製作と映画資料のアーカイヴ化に取り組む(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ぐうぐう

18
現在、この時代に観るべき黒澤映画を1本だけ挙げろと言われれば、迷いなく『デルス・ウザーラ』を俺は選ぶ。映画公開から40年を記念して出版された本書は、『デルス・ウザーラ』の決定版的メイキング本だ。これまでも、野上照代のエッセイなどで、撮影エピソードは紹介されてきたが、本書では野上の撮影日誌や、チーフ助監督を務めたヴァシーリエフのドキュメンタリーフィルム等を元に、新たに関係者に取材した内容も盛り込み、いかにして『デルス〜』が完成したかを、余すところなく伝えている。(つづく)2015/06/10

ワッピー

5
黒澤監督の低迷期に、ソ連からのオファーで撮ることになった映画「デルス・ウザーラ」制作の壮絶な記録。撮影に至るまでの概況「『デルス・ウザーラ』への道」、苦闘の撮影の日々を生々しく伝える「『デルス・・・』撮影日誌」、脚本の変遷を示す「脚本で観る『デルス・・・』」の三部構成。映画を作るということは大変なプロジェクトであるのに、「黒澤監督」が、「ソビエト」で、「思うようにならない自然状況の中で」撮るという困難。読んでいても苦しくて、読み終わるのに1年半かかりました。映画館で受けた鮮烈な印象は今もなお残っています。2017/01/22

ヨシモト@更新の度にナイスつけるの止めてね

5
絶望の淵から這い上がろうと呻吟する黒澤の凄絶で滑稽な姿に唖然とする一方、ブレジネフ時代のソヴィエト映画界が彼に提供した途方もない体力にも驚かされる。決定稿入りの大著だが、一瞬たりとも退屈することはなかった。関係者に拍手だ。2016/11/21

Lila Eule

3
40年前のソビエト共産党時代の黒澤明の映画撮影の日誌と元の脚本とその変更点をまとめた大作。脚本の決定稿は特に感動的な物語。映画は91シーンからなっていたそうだが、もとの脚本は101シーンあり、フィルム不良やソ連からの短縮化要請で削除されたシーンや、変更されたシーンももとを読めて、尚更、素晴らしい話だった。今回が初出と。撮影日誌では、物語と別次元の過激な仕事振りと生活振りに驚いた。芸術家の素顔をみるようで実に面白かった。2015/11/13

おじゃんぽこぺん

0
とんでもない人だ。2016/01/10

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