出版社内容情報
骨の髄まで浪花節に惚れ込んだ著者が、その思いのたけをすべて注ぎこんだ、書かるべくして書かれた待望の浪曲史。古くは説教浄瑠璃から、幕末の浪花伊助、明治後期の桃中軒雲右衛門、愛曲浪曲、広沢虎造、戦後のブームへと時を追って解く。
先頃亡くなった詩人の田村隆一さんは、現代日本からは義理人情が消滅し、人はエコノミック・アニマルという動物に進化した、と皮肉ったという。果してそうだろうか。義理人情にあつく、底抜けのお人好しのフーテンの寅さんは、今も全国で大変な人気と聞く。 かつてラジオを通して全国的に普及した浪花節こそ、この義理と人情、弱きを助け強きをくじく義侠心を表看板にかかげた、大衆芸能の雄であった。浪花節及び、浪花節的と称された日本人のある種の心情は今、どこへ行ってしまったのだろうか。 その答えは、本書をたどることで明らかにされよう。 変転つねなき大衆娯楽の中で、門付芸といわれ低く見られながら先人たちがいかに工夫を重ねて、時代の共感を獲得するにいたったか、時世のうねりがいかに浪花節をとりこみ、突き放したか。古くは説教浄瑠璃から、幕末の浪花伊助、明治後期の桃中軒雲右衛門、愛国浪曲、戦後のブームへと時を追って説く。 著者は『天保水滸伝』の作者・正岡容に師事し、舞台脚本執筆や演出、テレビ時代劇『水戸黄門』などの人気番組のシナリオライターをつとめる傍ら、新作浪曲を執筆、新人の育成にとまさに〃浪花節〃的献身を続けるこの芸能の魅力を知り尽した熱血
内容説明
20世紀日本を鼓吹した大衆芸能の雄、いずこへ。浪花節という芸能への知識と愛情が深く、古きを知り新しき現場にも立会っている著者による浪曲史。“浪花節という末枯れた老人との交遊録”といった気分のエッセーで、劇中劇のように、浪曲芸人の不可解な死を彼が追跡する推理小説のような報告もはさまれている。
目次
序にかえて 声調べ
第1章 御先祖さま
第2章 近い親類
第3章 文化から明治まで
第4章 江戸から東京へ
第5章 浪花亭駒吉
第6章 雲右衛門以前
第7章 桃中軒雲右衛門
お中入り 小説怨み節東亭三楽
第8章 浪花節とレコード
第9章 浪花節と富国強兵
第10章 戦後の浪曲
終章 最後の黄金時代
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