出版社内容情報
わたしは、この世でたった一人しか愛さない
物語は、10年前の展覧会場から始まる。画家の卵である主人公は、そこで初めて「わたしだけの神様」に出会う。20歳以上年上の彼は額縁職人だった。すぐに〈わたしたち〉は愛しあう。でも、恋は1年しかつづかなかった。そして10年後の再会。〈わたし〉は高校の美術教師になっている。38歳。再会はホテルの一室だった。そこでの優しくて官能的な性描写は、ため息が出るほど美しく、嘆賞に価する。
〈わたし〉が唯一気に入っている自作の絵は「夜の街なみ」を描いた風景画だ。「夜の風景は、いかなる光を浴びせられても夜のままなので安定しているし、すべての色を使うには昼よりも夜のほうが描ききれると、わたしは考えている」。その絵を見た高校生の教え子たちはこう感想を述べる――「誰も愛しあわなかった夜みたい」「愛しあうって、どういうこと?」「セックスだろう」「誰もセックスしなかった夜みたい」
物語は、〈わたしだけの神様〉の死、感動的な終結に向かって静かに穏やかにながれていく。
「きらら」連載の「誕生日」を全面改稿した作品。
【編集担当からのおすすめ情報】
ピュアで官能的で美しい恋愛小説の決定版。
内容説明
わたしは、この世でたったひとりしか愛さない。―年上の妻ある男性を愛しつづける美術教師。女優にして映画監督、ジャンルを超えて活躍する俊英が、繊細で壊れそうな至純の愛を描いた書下ろし長篇小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かんちゃん
14
初唯野未歩子さん。失礼ながら女優さんであることや、本書以外の作品があることなどの知識は皆無でした。 女性美術教師の不倫と宗教と愛と生を描いた作品ですと言い切ってしまうと、本書のニュアンスが全然伝わらないですね(~_~;) 女性ならではの、現実と空想の端境や少し霞みがかった空気感が著者の持ち味かどうかは、この一冊しか読んでいない私にはわかりません。 他の作品も読んでから判断したいと思います。2015/05/31
skellig@topsy-turvy
5
表紙に惹かれて。恋愛小説はどちらかと言えば苦手なんだけど、文章が綺麗で淡いせいか読みやすかった。不倫の恋にありがちなナルシズムとかえげつなさはほぼない。穏やかな水彩画めいた全体的雰囲気と両立は難しいかもしれないが、主人公の母に対する複雑な感情をもう少し掘り下げても面白かったかも。中々好みだった。2012/11/20
神尾@図書館でバイト中
4
タイトルに惹かれて。主人公にとって「神様」ってなんだったのだろう。恋人を神聖視しているのかと思いきや、神様のせいで恋人を捨てたとか、ちょっとよくわからない部分もあった。文章は綺麗。叩くと高い音で短く響くようなイメージ。色彩が文字から溢れてくる。特に117ページから始まる交接のシーンはあられもなくすべてを描く猥褻さを持ちながらも、うすぼんやりした部屋の色彩や肌の熱さを気持ちよく伝えてくる。いやらしさより美しさが数段上であったように思った。2013/10/26
Monsieur M.
3
うーん。 これはちょっと、わたしにはしっくりこなかったなあ。 残念ながら……。2015/04/13
Hachi
3
どこに向かうのかが見えないため、つまらないと思う人も多そう。ただ淡々と静かに語られる文章が、まるで映画のような美しさを伴う。現実的、というよりは幻想的なほわほわとした印象。個人的には好きな本。2012/04/01