出版社内容情報
「読み始めた途端、これは傑作である、と確信する小説が時にある。こういう小説は年に一作しかない。2009年はこれだ。」──北上次郎氏(『読売新聞』6月4日付)
TBS系『王様のブランチ』で紹介、「人間ドラマとしても戦の物語としても第一級の傑作だ!」──松田哲夫氏
内容説明
1342年(南北朝時代)、悪党の襲来に備え、侍を八人雇った村が実在した。これは、弩を手にした因幡の百姓たちの物語である。
著者等紹介
下川博[シモカワヒロシ]
1948年2月10日生まれ。鎌倉学園高校、早稲田大学を卒業後、脚本家として活躍。小説に、2006年・第18回堺自由都市文学賞受賞作の「閉店まで」(2006年8月読売新聞大阪版掲載)がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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イノ
28
中国史や西洋史では切っては切れない「ど」が日本では何故、普及しなかったのか。長年不思議に思っていた事が解き明かされて面白い。また、南北朝時代の農民の生活、悪党との対戦、つまり室町時代の始まりから終わりまでが戦国時代とする、下川さんの「はじめに」からの叙述。すべては横浜 称名寺の結解状の僅かな記述から、一冊の小説に膨らます想像の翼が楽しめた。2016/12/10
チャリー・コグコグ
18
初読みの作家。百姓たちが自衛のために武器を持って戦う。歴史上には名も無き者たちが強かに生きている様に躍動感あり。物語の舞台は、鎌倉幕府末期から南北朝時代、百姓から武士や商人へ、小作人が自前百姓に成り上がるなど、江戸時代の様な身分の固定化もそれほど強くなかったのだろう。生き様に夢があるから面白い。武士が好まず日本では普及しなかった弩という武器を百姓たちが戦いで使うのが皮肉だが、それがまた良い。2019/05/09
ホッケうるふ
15
読み始めたら一気に引き込まれた。志水辰夫の夜去り川に似て時代小説だが中央から外れた村が舞台で登場人物の殆どがその村民。そして彼らと派遣された純粋な僧が村の社会的機能を向上させ興してゆく様が人物の活きた描写と相まってまるで飽きさせない。表紙にドーンと出たタイトルの武器を手にする戦闘場面は終盤ギリギリ登場するのみですぐ終わるが結構手に汗握る。だがこの物語の面白さはそこに至るまでの農民達の生き様を実感できる点にある。ラストは膨らませた物語が紙風船が萎んでいくような終わり方。しかし歴史の埋没感を感じさせてよい。2013/11/27
アルラ
10
横浜の古刹称名(しょうみょう)寺に伝わる史料を元に、鎌倉末期に寺の領地をめぐる紛争を軸に、物語は進んでいく。舞台は因幡(いなば)の国、智土師郷(ちはじごう)。鳥取県県八頭(やず)郡智頭町那岐地区として残っている。今まで知られることがなかった「百姓が侍を雇う」という史実。いくら時代小説が好きでも、南北朝?・・・と腰は引き気味だったが、誤算だった。読み出したら止まらない。(続く)(2009/9読了)2011/03/05
こんじろん
8
まぁまぁでした。 学術的な意義はあるのかもしれません。 ぐいぐい引き込まれるような感じはないですね。 読むまで知らなかったのですが、物語の舞台になった地域に住んでいたことがあるので、親しみは感じました。2010/04/11