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どん底―部落差別自作自演事件

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  • サイズ B6判/ページ数 398p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784093798327
  • NDC分類 361.86
  • Cコード C0095

出版社内容情報

現代の部落差別の実態と犯人の正体に迫る

03年12月から09年1月まで、被差別部落出身の福岡県立花町嘱託職員・山岡一郎(仮名)に対し、44通もの差別ハガキが送りつけられた。山岡と部落解放同盟は犯人特定と人権啓発のために行政や警察を巻き込んで運動を展開していったが、09年7月に逮捕された犯人は、被害者であるはずの山岡一郎自身だった。
 5年半もの間、山岡は悲劇のヒーローを完全に演じきった。被害者として集会の壇上で涙ながらに差別撲滅と事件解決を訴え、自らハガキの筆跡や文面をパソコンを駆使して詳細に考察し、犯人像を推測していた。関係者は誰も彼の犯行を見抜くことができなかった。
 被差別部落出身で解放運動にたずさわる者が、自らを差別的言辞で中傷し、関係者を翻弄したこの事件は、水平社創設以来の部落解放運動を窮地に陥れた。06年の大阪「飛鳥会」事件で痛手を負っていた部落解放同盟は、この自作自演事件で大打撃を被ることになった。
 なぜ山岡はハガキを出さざるを得なかったのか--現代の部落差別の構造と山岡の正体に鋭く迫りながら、部落解放同盟が”身内”を追及する前代未聞の糾弾のゆくえを追う。
 週刊ポスト連載「糾弾」から改題。

【編集担当からのおすすめ情報】
著者は事件の舞台となった被差別部落に何度も通い、100人近い関係者から話を聞いて歩きました。根気強い取材から見えてきた犯人・山岡の人物像や、今も残る部落差別の実態は衝撃的です。部落解放の父と呼ばれる松本治一郎を描いた『水平記』著者だからこそ書くことができた”問題作”をご堪能ください。

はじめに
第一章

内容説明

おぞましい言葉に満ちたハガキ44通。「犯人」は「自分」だった。複雑に歪んだ「現代の部落差別」の構造を抉る事件ノンフィクション。

目次

魔物の誕生
最初の出来事
解放運動家とはなにか
悲劇のヒーロー
一家総出のキャンペーン
自演の終わり
自白は二度おこなわれる
糾弾の果て

著者等紹介

高山文彦[タカヤマフミヒコ]
1958年宮崎県高千穂町生まれ。法政大学文学部中退。1999年、ハンセン病で早逝した作家の評伝『火花―北条民雄の生涯』(飛鳥新社刊、のちに角川文庫)で第31回大宅壮一ノンフィクション賞と第22回講談社ノンフィクション賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ゆみねこ

67
自分の職を失いたくないために、自作自演の差別葉書を出し続けた山岡一郎(仮名)。部落差別と言うものは、自分自身が育ってきた周辺では見聞きしたことがないので、正直感想を書きにくい。他者を見下し自分を優位におきたい人間の闇の部分、これは排除しなくてはならないのに、とても難しいことなのでしょうね。「橋のない川」を読み返したくなりました。2016/02/15

それいゆ

36
この話は10年も20年も前の出来事ではありません。現在の部落問題に対する人々の意識がはっきりと現れている事件です。中味は山岡一郎(仮名)なる人物が起こした自作自演の差別事件であって、すべて彼が批判されるべきなのですが、その遠因はいまだになくならない部落差別なのです。結婚を申し込む際、自分の出自を告白することの決断を迫られる、苗字を変えたい、外に出て暮らしたいと願う状況が依然と続いているのです。天下の大週刊誌「週刊朝日」が、橋下徹大阪市長の出自を平気で記事にして差別に加担するという、まだそんな時代なのです。2013/03/25

Maiラピ

36
内容は副タイトル通り“部落差別自作自演事件” ヒエロニムス・ボスの挿画のように不可解な薄気味が悪い男の起こしたショッキングなケース。昨年21年の夏に逮捕されたのだが、福岡県での事件なのに初めて知る。地形に疎く、今ちょうど水害で矢部川辺りが良くニュースになるので、あの辺りかと。。。役場の嘱託の雇用継続のための同和問題を利用した犯行だったが、次第に悲劇のヒーローになりきり、各地で公演し、世間のみならず同志や仲間の信頼を裏切り、最後は自滅する。彼を信じていた三人の子どもが憐れです。2012/07/18

そうたそ

26
★★★☆☆ このような事件があったなんて寡聞にして知らなかった。同和問題というのは、義務教育段階で行われる人権教育において誰もが接してきている問題であろう。だが、本作はそういった同和問題を本質として取り扱ったものではない。むしろ、山岡一郎(仮名)という男の異常性がメインテーマではないかと個人的には思った。この山岡一郎がなぜこういう常人には解せない行動に出たのか、その真意は最後までわからない。だからこそこの一連の問題に恐怖を感じる。悲惨極まりない残忍な凶悪犯罪とはまた別種の恐怖をこの事件から感じ取った。2013/04/06

いくら

24
出自が何処であろうと関係ない、ただ人として大切なものが欠落した男の、嘘で固めたちっぽけな男の話。周りがどんなに誠意を尽くしても、どんなに糾弾しても伝わらない虚しさを感じた。部落問題や解放運動の歴史と現状にも触れられており、たいへん勉強になった。2013/06/08

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