出版社内容情報
井沢 元彦[イザワ モトヒコ]
著・文・その他
内容説明
なるほど形のうえでは源氏と平家が争っているように見える。また『平家物語』『源平盛衰記』といった作品は、その点を重視している。しかし、よく考えてみると、頼朝と義仲の争いは「源平」ならぬ「源源」決戦だ。
目次
第1章 鎌倉幕府の誕生(1)源頼朝と北条一族の謎編―「源源合戦」「幕府成立」を予見した北条時政の謀略
第2章 鎌倉幕府の誕生(2)源義経と奥州藤原氏編―“戦術の天才”義経が陥った「落とし穴」
第3章 鎌倉幕府の誕生(3)執権北条一族の陰謀編―鎌倉「幕府」を教える歴史教科書の陥穽
第4章 武家政治の確立(1)悲劇の将軍たち編―「言霊将軍」実朝を暗殺した黒幕
第5章 武家政治の確立(2)北条泰時と御成敗式目編―「法の正義」に優先する「道理」精神
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひろき@巨人の肩
104
皇国史観の呪縛の中、誕生した「武士政権」の真相を考察した本書。平安末期は、平家政権を中心に、源氏を御輿とした北条・東国武士団、奥州藤原氏が三つ巴で拮抗。その中で源頼朝、義経兄弟が、政治・軍事の天才として活躍して、武家政権「鎌倉殿」を立ち上げる。ただ、晩年に摂関政治を目指した頼朝や、言霊将軍の実朝など、賜姓豪族の末裔として武士の当主になりきれなかったことが源氏将軍断絶の悲劇を生む。そこに執権政治で北条氏が台頭。源頼朝を支えた時政、政子と御成敗式目の泰時の功績は大きい。悲願の武士による土地所有権を勝ち取った。2022/09/08
背古巣
50
鎌倉幕府を作ったとされる源の頼朝は、実はお神輿であったこと。お神輿ではあったが、頼朝はものすごい強運の持ち主であったこと。義経はこれまで理解していた以上に戦の天才であったこと。戦術は超の付く天才であったが戦略については全くのおバカであり、義経の悲劇はそこに起因していることが特に面白かった。また鎌倉幕府が出来上がっていくまでの過程も、知らないことばかりでとても興味深かったです。2020/09/07
きたぴー
16
非常に濃い1冊♪頼朝達の挙兵が「鹿ヶ谷の陰謀~以仁王の令旨~頼政討死」と続く流れの末の「窮鼠猫を噛む」的な決起だったとは。本当に頼朝の前半生は奇跡の連続で、歴史の不思議さ面白さを改めて感じた。他にも世界的な軍事の天才義経の活躍と悲劇、古狸後白河の陰謀、黄金郷奥州藤原三代の確立と滅亡、天才政治家北条時政の慧眼、後鳥羽と与した実朝の暗殺など、誠に盛り沢山で興味深いことだらけ!我家のご先祖さま義時を初め政子、泰時らの活躍(陰謀?)も良かった。「革命」だけど「あるべきよう」に。「和→納得→道理」勉強になりました。2021/06/30
あいら
16
再読。 頼朝が挙兵した辺りの日本では日照りが続き西日本では凶作となり東日本では豊作であったこと。 故に西日本では餓死者が続出。 さらに台風による被害、追い討ちをかけるかのような疫病の流行。 京都の左京部分で二ヶ月間の間に転がった遺体は四万を越えると言う記録もあるとか…。 その状況の違いが源平合戦の明暗を決める要因の一つでもあったのではというのはおもしろかったです。 そして現在、気候や疫病の流行と言う点がとても似ているな…と思った。 今も不安ですが当時はもっと不安だったんだろうな…。2020/09/10
読書実践家
10
屋島の戦いと扇、平家の滅亡と頼朝の政治的センス。ヨーロッパの概念と日本人の生き方を関連させている点が面白かった。2016/04/06