出版社内容情報
1905年カナダの田舎で数奇な生まれ方をした女性が、アメリカへ渡り、二度の結婚、三人の子育て、夫の死を経て園芸家として生きるが、最期は身辺を片付け、フロリダの老人ホームで亡くなるまでを綴る。ピュリッツアー賞受賞の世界的ベストセラー。
原書は1993年にカナダのランダムハウス社より刊行され、アメリカでパブリッシャーウイークリーのリストに11週連続で載り、長くベストセラーをキープした話題の小説。世界20か国で翻訳され、1995年小説部門でピュリッツァー賞を受賞。 本書は日記の形式をとり、主人公のデイジーの一生を綴っていきます。本人は勿論、夫、父親、娘、息子、大学時代からの親友、さらには孫や姪、甥など年代や親密度の異なる彼女の周辺のひとびとの目を通して、環境に順応しながら生きたように見えたが、実は芯が強く、精神的には孤独であった女性の一生を語らせます。 1905年にカナダの田舎で出産と同時に亡くなった母親の傍らで生きていた赤ん坊デイジーが主人公です。彼女は隣家の夫人に育てられ、石工だった父とは長く離れて暮らします。最初の夫はヨーロッパでの新婚旅行中に不慮の死を遂げ処女のまま未亡人になります。後に育ての親の息子と再婚し三人の子どもに恵まれ幸せに見えますが、常に本心をあかさない不思議な日々を送り、夫の死、子どもの独立などを経て、最期は財産や身辺の諸事をきれいに片付けて老人ホームで娘や友人に看とられて亡くなります。
内容説明
人生の愛と孤独を知性豊かに描いた女の一生。ピュリッツァー賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きりぱい
4
タイトルと表紙の感じからすると思った以上によかった。長い系図と一族の写真に、え?実話!?と読み始めた物語は、デイジーという女性の誕生から最期までを追う。生まれる前の両親の章が柔和な印象なのにエキセントリックで愉快。結婚、子育てとデイジーを取り巻く人々が多彩で楽しい。娘のアリスが少女の頃、最後に言いよどんだ質問にドキッ!身に覚えが・・。アリスはまた、老いた母へ最後の質問をする。「人生はお母さんにとって何だったと思う?」娘の立場として母の立場として胸を熱くもさせられるのに、軽妙で心地よい物語だった。2011/05/11
Mark.jr
3
何も知らないで読むとフィクションに見えるけど実は実際にあった出来事を元にしている小説の逆、実際にあった出来事みたいに見えるけど完全なフィクションというタイプの作品です。なんと、作中の登場人物の写真まででてくる凝りよう。おおらかな雰囲気はアメリカっぽくもありますが、ちょっと斜から見たような意地悪さがあるのがカナダらしいというと安易でしょうか。なんにせよ、作為を感じさせないぐらい相当小説が上手い人が書いた作品ですよ。2025/02/18
笠井康平
1
女の一生は、作り話じゃなくもない。2014/01/06
こぶた
1
★★★★★ スタートは波乱万丈だったが、平穏に、でもとても前向きに生きたデイジーの人生は素敵だと惹き付けられ、共感を持ちながら読める。油絵やドライブなどやるチャンスがなかったとしてもそんなことどうだっていいじゃないか、と思った。が、デイジーが信頼できない語り手だとしたら、すべて自分の都合のよい視点で構築した世界であり、とても巧みな小説ということになる。2013/03/19