内容説明
裕福な家庭に育ちながら、朝鮮戦争で父が殺されたり、姉が北側の軍隊に連行されたりして人生がくるってしまった韓国人女性と、新聞社の韓国特派員を務める〈私〉。「一種投げやりに不安定な心の匂い」に惹かれて、日本に帰国後も海峡を挟んで連絡を取り合っていたが、結婚する決心はついていなかった。「国のちがい、習慣のちがい、父親がどういう仕事をしていたのかはわからないがかなりぜいたくに育ったらしい彼女との生活程度のちがい―生まれてくるはずの子供の将来のこと」を考えると不安になるし、友人や家族まで反対したからだ。ともあれ、婚姻届けを提出し、日本でふたりの生活を始めたものの、来日三、四日目には「きつい表情で黙りこんだあと、彼女の感情は不意に激しく渦巻き始めて、自分でもどこに向うのか見当のつかぬつむじ風のように荒れ出す」という激しい性格があらわになる。はたして、大波にもまれるような結婚生活の行方は―。平林たい子賞に輝いた、私小説の名篇。
著者等紹介
日野啓三[ヒノケイゾウ]
1929年(昭和4年)6月14日―2002年(平成14年)10月14日、享年73。東京都出身。東京大学文学部社会学科卒。小中学校時代を韓国ですごしたあと、故郷・広島県の旧制中学を卒業。大学卒業後、読売新聞社入社。ソウル、ベトナム特派員を務める。『あの夕陽』(芥川賞)、『此岸の家』(平林たい子文学賞)、『抱擁』(泉鏡花文学賞)、『砂丘が動くように』(谷崎潤一郎賞)、『台風の眼』(野間文芸賞)など著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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