内容説明
「苦」を諧謔的に描く“小説の鬼”の出世作。「なぜ、あなたは、私がはじめにあなたと一しょになろうといった時に、いけない、おれは甲斐性なしのいくじなしなんだから、と白状してきっぱりとことわらなかったんです。…いくじなし」日々、妻のヒステリー発作に悩まされている売れない画家の住友。要領が悪く、お金もない住友を、住友の親がいようが、近所の目があろうが、おかまいなしに大声で騒ぎ立てる妻の存在が、彼にとっては「苦」そのもの。さらに、芸者の恋人を父親に奪われてしまった住友の友人、妻の親によって妻を芸者に売られてしまった周旋屋、じつは家族につまはじきにされていた住友の妻など、苦しい思いをしている人々を、ユーモラスに描いた作品。大正から昭和にかけてさまざまな作品を発表し、芥川龍之介や直木三十五、水上勉らに多大な影響を与えた“小説の鬼”の出世作。
著者等紹介
宇野浩二[ウノコウジ]
1891(明治24年)年7月26日‐1961(昭和36)年9月21日、享年70。福岡県出身。1950年『思ひ川』で第2回読売文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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