内容説明
小説と随筆をシームレスにつなぐ小沼の世界。「グリイン・コオチと云ふ緑色の長距離バスがあつて、それを利用して娘と小旅行した。このバスは倫敦を出ると田園風景のなかを走る。巨きな樹立の続く竝木路とか、緩かな起伏を持つ牧場、森蔭に覗く町の教会の尖塔…そんなものを見てゐるだけで愉しかつた。」早稲田大学の在外研究員として半年間ロンドンに滞在した経験から書かれた表題作のほか、江戸時代にロシアに漂着したある日本人が、現地で日本語教師として活動し、ついには世界初の露日辞典まで編纂したという史実に基づいた「ペテルブルグの漂民」、師と仰ぐ井伏鱒二ら文学仲間との東北旅行を描いた「片栗の花」など、小説と随筆を取り混ぜて11篇収録。旧仮名遣いながら、ユーモアを交えた流れるような文章で、読者を小沼ワールドに誘い込む。
目次
バルセロナの書盗
ペテルブルグの漂民
ニコデモ
断崖
女雛
黒と白の猫
懐中時計
緑色のバス
ドビン嬢
エッグ・カップ
片栗の花
著者等紹介
小沼丹[オヌマタン]
1918(大正7)年9月9日‐1996(平成8)年11月8日、享年78。東京都出身。本名・小沼救(おぬまはじめ)。1969年『懐中時計』で第21回読売文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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YO)))
14
小沼丹はいいぞ。旧仮名遣いがありがたい短編集。 巻頭「バルセロナの書盗」は紀田順一郎の書きそうな古本ミステリのスペイン版の趣きがある。 表題作「緑色のバス」はロンドンから郊外への観光の記録で、テムズ川下りもあり和製「ボートの三人男」的な佳作。 大寺さんものも二編収録。2024/05/26
ふるい
5
半分くらい既読でしたが、「黒と白の猫」「懐中時計」など、何度読んでも味わい深い短篇ばかりです。2025/03/01
のうみそしる
1
大寺さんはもちろん、歴史ものや伝記ものさえもすっかり小沼節の飄々とした一歩引いている感じ。人があっけなく物故する。でもそれは冷たいわけではなく、そういうもんだよ、と、人の営みを優しい眼差しで見つめているよう。くすん、と上田君の鼻を鳴らす音が聞こえて、ちょっと故人を思い出すのだ。物語の終わり方が鮮やか。蛇足がない。シケイダは失敬だ。2025/11/20




