出版社内容情報
粗暴な主人とクリスチャンの妻、腹に一物ある息子――大学生の〈私〉がひと冬を過ごした下宿先一家のドタバタ劇を描いた表題作に、戦後の現実をシニカルに綴る「アルト・ハイデルベルヒ」を併録。
内容説明
「私にとっては、霧島家の貧寒で乱雑な空気だけが身を置くべき場所となっていた。泥水の中でなければ落ちついて棲むことのできないある種の魚たちのように…」大学生の“私”は、学校にも学友ともなじめず、下宿していた叔父一家ともしっくりいかずに、貸間と貼り紙のあった霧島家の6畳間を借りることになった。ところがその主人・嘉門は自分勝手な暴れ者で、幼いふたりの子を抱えたクリスチャンの妻・まつ子を泣かせてばかり。しかし“私”はなぜか嘉門を嫌いになれず―。原節子出演で映画化もされたベストセラー作品。旧制高校の同窓会を通じて、戦後の現実をシニカルに描いた「アルト・ハイデルベルヒ」を併録。
著者等紹介
阿部知二[アベトモジ]
1903年(明治36年)6月26日‐1973年(昭和48年)4月23日。享年69。岡山県出身。1936年に発表した『冬の宿』で注目される。英文学者として小説・文芸評論の翻訳も多い(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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