出版社内容情報
日本での役所勤めを辞め、パリの大学で社会科学の研究にいそしんでいた〈私〉は、結核に感染したことをきっかけに、重大な決心をする……。「離愁」「故国」と続く三部作の第一作。
内容説明
「歓喜をともなわない仕事をして、どんな仕事ができよう…いつはてるか知れない命のある間、生命を歓喜にもやすような仕事をしたい」日本での役所勤めを辞め、パリの大学で社会科学の研究にいそしんでいた“私”。指導教官にも恵まれ、帰国するまでに学位を取得できるはずだった。ところが、結核に感染していることがわかり、療養生活を送ることに。気分を萎えさせる言動を繰り返す妻、一進一退を繰り返す病状に、“私”は重大な決心をする…。「離愁」「故国」と続く三部作の第一作。
著者等紹介
芹沢光治良[セリザワコウジロウ]
1896年(明治29年)5月4日‐1993年(平成5年)3月23日、享年96。静岡県出身。1965年『人間の運命』で第15回芸術選奨文部科学大臣賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゆかっぴ
5
久しぶりの芹沢さんの作品。自分の生き方と夫婦の在り方のバランスが難しい上に病気との付き合い方もあり息苦しいような感覚になりました。でもパートナーからこのように思われていたらやるせないだろうと思います。2021/08/10
tegi
2
娘が作家に送ってきた、老いて死んだ父の手記…という枠を作ってはいるものの、実際は芹沢自身の体験を描いたものと思われる。『人間の運命』7巻と8巻の間で、描かれていないフランスでの日々が描かれる。それにしてもこの内容を妻が存命中に発表するのだから芹沢も大胆な人間だと思う。作中、妻に自己中心的と責められるのも、そういうところじゃねえのかなあ。『人間の運命』と同様、そういう芹沢の弱くふらふらとしたさまが延々描かれるのだけど、それが不思議と読ませるし、心も休まる。聖者でも悪人でもない主人公に、共感しともに歩く感覚。2024/03/17
ラッシー
1
「いつ果てるか知れない命のある間、生命を歓喜に燃やすような仕事をしたい」、強いドグマ。とつぜん三木清が登場してびっくり。今進んでいる研究の道と、かつて諦めた創作の道という対比は「やめてくれ、その術は俺に効く」って感じだし、「いたずらに小説を読み耽ってるだけで何が創作を志すだ」って部分は刺さった。この4月に単行本になったわけだけど、続く2篇も近いうちに出るのかな? 沼津の芹沢光治良記念館、行きたい。2021/06/26
チャンドラーローレンスジュニア
0
文学を志すもその希望を叶えられなかった父の遺品から見つかった文学的手記。その娘がたった一人の読者になってほしいと自分の先生に送る手紙によって手記が読者に紹介されるという形で始まる。 最初の方は大学の講義やゼミのような少数の受講者のやり取りなどで程よいテンポで話は進んでいくが、途中から(だったと思います)主人公である父が病気になり、それ以後はすべてが出来事や父の考え、思いなどの一人語りで、冗長の感を逃れえませんでした。 どうすれば一人語りであっても冗長にならない書き方ができるのか、なかなか興味深いです。2022/08/19
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