内容説明
東京郊外で大学講師を務める矢口忍。その聴講生・卜部すえの、誠実で奥ゆかしく、はかなげなところに惹かれ恋仲になるが、すえとはまったく違うタイプの女性に心を奪われ、結婚してしまう。すえの「最後に、もう一度会いたい」という願いをにべもなく断った直後、すえが自殺―。以来、矢口は北海道の寒村で中学校の教師になり、自分を罰するためにひたすら禁欲的な生活をしていた。しかし、友人の誘いで出掛けたシリアへの旅をきっかけに、矢口の心に変化が生まれ、止まっていた時間が少しずつ動き出す―。1976~77年に「毎日新聞」に連載された、「愛とは何か」を鋭く、深く問う傑作長編小説の上巻。
著者等紹介
辻邦生[ツジクニオ]
1925年(大正14年)9月24日‐1999年(平成11年)7月29日、享年73。東京都出身。1995年『西行花伝』で第31回谷崎潤一郎賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Akira Suzuki
2
自分にとってこの本は一生忘れらない大切な一冊。初読は数十年前。これまでの人生で何か上手くいかない時にいつも自分の行く道をさし示す灯台のようなものだった。苦しい時に立ち戻る場所でもあった。それくらい自分に大きな影響を与え、生きる勇気をくれた素晴らしい作品。2024/07/03
クッシー
1
自らの後ろめたい過去を罰するために、北海道で教師をする主人公矢口。5年の歳月は過去と向き合わせ、心境の変化をもたらした。ああすればよかった、こうすればよかったなどとはよく思うものだが、決してやり直すことはできない。おそらく主人公が痛感した事だろう。タイトルにある通り、時の流れを楽しめる作品。彼を取り巻く友人のまなざしも暖かく羨ましいと思った。主人公は過去とどのように向き合い、どうやって生きていくのか。下巻に期待。2021/08/25
今野ぽた
0
読むのがしんどくなって後半は飛ばし読み。下巻はいいかな…2020/06/10
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