内容説明
1945年8月、広島と長崎に原爆が投下され、その直後に迎えた敗戦。GHQ占領下の卑屈な統治時代を、市井の人たちがどのように生き抜いたのか、ある海軍中将一家の目線で描く。未亡人となり家財総てを失った中将夫人、米軍人に求婚される長女、原爆被害で恋人と離ればなれになってしまった長男、その長男を想いながらも米兵に身をゆだねてしまう恋人…。戦勝国・アメリカを呪いながら、その助けなしには生きていけない日本人の哀切と、それでも新時代に向けて歩みを始める強さを、心の奥底を揺さぶる独特な筆致で綴った秀作。
著者等紹介
芹沢光治良[セリザワコウジロウ]
1896年(明治29)年5月4日‐1993年(平成5年)3月23日、享年96。静岡県出身。1965年『人間の運命』で第15回芸術選奨文部科学大臣賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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みや
9
8月恒例の戦争モノ。1952-53年に「婦人公論」誌に発表された著作。ヒロシマでの惨劇を端緒に、被爆者・敗戦国民という重い十字架を背負った老若男女の戦後をそれぞれの視点で描く。武士道、信仰心、没落、未亡人、オンリーさん、強制性交、人種差別…。題材は多岐にわたるが、一貫して「蹂躙」というコトバが頭をよぎる。それが敗戦国の運命。しかし、絶望的な状況でも希望を失わず、自己犠牲の精神がうかがわれる無辜の民の姿に救われる。2023/08/26
水さん
1
50年前の小説とは知らずに読みましたが、原爆の描写は生々しいものでした。 サムライや軍人など、強さを誇る心情は今と変わらないかもしれない2020/05/05
うさえ
0
「淡泊で健忘症のような日本人」が、戦後80年を迎えようとしている。今こそ読まれるべき一冊。2024/05/06